法医学におけるフォトグラメトリ (事例付き)

法医学でフォトグラメトリを活用する利点

フォトグラメトリ (写真測量) は、法医学分析において非常に強力なツールとなり得ます。

事故現場や犯罪現場を 3D で再現することは、特に位置、距離、視点が重要なカギとなる場合には非常に役に立ちます。現場では多数の写真を撮影するため、フォトグラメトリは捜査官や弁護士、保険査定員がより良い情報を得るための実用的な方法であると言えます。

さらに、フォトグラメトリを利用することにより、現場での調査が終了して長い時間が経過した後でも、測定データを保存、回復できます。捜査官が現場検証を終えてから数か月後に調査を再開し、新しく未測定の重要な証拠を発見するといったことはよくあるため、これは大変貴重なメソッドです。

フォトグラメトリは、法医学において、以下のような実用的で幅広い適用例が挙げられます。

  • 事故車両の破損痕測定
  • スキッド痕の測定
  • 弾道のモデリング
  • 足跡やタイヤ痕のスキャニング
  • 血液飛散調査
  • 容疑者の推定身長の算出
  • 事故や犯罪現場のマッピングおよびダイアグラム化

フォトグラメトリ技術の信憑性

現代のフォトグラメトリ技術は、第二次世界大戦中の軍事用途までさかのぼり、信頼性の高い使用歴があります。しかし、1990 年代にパソコン革命が到来し、必要とされる処理能力が普及するまでは、その技術は一般人には遠い存在でした。

それ以来、フォトグラメトリは考古学らから地質学、建築、工学にいたるまで、さまざまな分野で活用されるようになりました。

フォトグラメトリは、法医学分野においていち早く取り入れられました。著者 (法医画像コンサルタント Mike Mayda 氏) 自身は1990 年代後半に PhotoModeler を導入しましたが、当時はあまり知られた技術ではなく、そのデータが証拠として法廷で受け入れられるか否か、というのは難しいところでした。しかし、フォトグラメトリが普及するにつれ、そのあたりの事情もだいぶ変わってきました。

技術の適用上で誤りがないことが前提ですが、過去 15 年間に著者がフォトグラメトリに基づくデータを法廷で認められなかったことは一度もありません。PhotoModeler は、他のソリューションに比べ、法医学の分野では確立された使用実績があるため、依然として著者の本命ソフトウェアです。

フォトグラメトリ用の画像要件

法医学におけるフォトグラメトリには多くの利点がありますが、どんな画像でもフォトグラメトリを使った再現に使用できるわけではありません。

通常のプロセスにほんのちょっとした調整を加えるだけでフォトグラメトリに適した画像が撮影できるにも関わらず、多くの事故や犯罪現場の撮影係が知らないうちに有益な幾何学的データをキャプチャする機会を損なってしまっています。

原則として、フォトグラメトリに使用する写真は「CARDS 基準に準じる必要があります。

  1. 一貫性 (Consistency): 同一のカメラで、ズームや照明など同一の設定で写真を撮影すること
  2. 角度 (Angles): 現場の写真をさまざまな角度から撮影すること
  3. 参照 (Reference): 参照できる値として、写真に撮影されたオブジェクトを測定すること
  4. 識別できるフィーチャー (Distinguishable features): 現場の重要なオブジェクトやその物理的なフィーチャーが写真上で容易に識別できること (各フィーチャーをキャプチャした写真が最低でも 2、3 枚ずつ存在)
  5. サイズ (Size): 写真全体のサイズに対して、重要なオブジェクトが十分な比重を占めていること

これらの基準に従うことにより、撮影した写真はフォトグラメトリの活用に十分耐えうるクオリティになります。しかし、現場によっても具体的な要件が異なる可能性があります。判断がつかない場合には、フォトグラメトリの専門家に相談し、該当する写真が正確な再現に使用可能かどうか確認することが賢明だと思われます。

事例: 公園の遊び場での事故

法医学におけるフォトグラメトリの威力をお伝えするために、ここで実例を挙げてみましょう。

これは著者が最近取り組んだ実際のケースです。使用した写真のクオリティがかなり低かったのにも関わらず、特にこのケースを選んだ理由には、それほど理想的でない条件下でも、フォトグラメトリが実用的なソリューションとなり得ることをお見せしたかったからです。

このケースは、公園の遊び場で起こった転倒事故です。遊び場には大きな遊具の小屋があり、小屋に向かって階段がありました。ある女性が、その小屋で遊んでいた自分の子どもと話をするために階段を上って歩み寄りました。階段を下りる際に、彼女は足を踏み外し、足首を骨折してしまいました。

原告側によると、この転倒事故は、小屋の階段付近にあるマットが擦り切れて穴が開いていたことで起こりました。階段の最後の一段は他の段に比べて高さがあり、そのさらに下には、固めた砂の上にゴム入りのマットが敷いてありました。原告は、階段の最後の一歩を下りたときに、不ぞろいな表面に足を踏み出し、足が引っかかったために転んでしまったと主張しました。

一方、被告側は、不ぞろいな表面は階段からはかなり離れたところにあり、原告がそこに足を踏み入れたとは考えられない、という意見でした。実際には、原告が最後の一段の高さを誤判断したために、当時履いていたハイヒールのサンダルでバランスを失ったのではないか、という見解でした。

証拠およびその分析

この場合、事故後にマットが修復されてしまったために、単純に階段と不ぞろいな表面との距離を測定することは不可能でした。

唯一手元にあったのは、事故当時に解像度の低い携帯電話のカメラで撮影された 3 枚の写真でした。これらの写真は明らかに完璧とは言い難く、CARDS 基準も満たしていませんでした。しかし、法医学において理想のシチュエーションというものは滅多に存在せず、分析テクニックの真のチャレンジは、それが実世界の条件下でも通用しうるのか、という点にあります。

この事故は、比較的簡単なシナリオであったために、フォトグラメトリを使った分析が可能でした。本質的に、カギを握るポイントとなったのは階段と不具合のあったマットとの距離という一点のみでした。

PhotoModeler を使うことにより、事故発生時の現場の 3D モデルを生成することができました。3D モデルの分析結果によると、不具合のあった場所は、実際には階段からは離れており、原告の転倒の原因とはなり得ないことが判明しました。我々のこの分析が、最終的な和解において重要な役割を果たしました。

貴重な法医学的ツール

上の例が示すように、フォトグラメトリは、法医学におけるツールキットの中でも非常に貴重な部分となります。

捜査官や交通事故解析士は、事故や犯罪現場についてより良い情報を入手できます。弁護士にとっては、具体的で視覚に訴える事故の再現を行うことにより、陪審員に強力に働きかけることができます。フォトグラメトリを正しく適用することにより、犯罪解明や勝訴といった決定的な結果を導き出すことが可能です。

本記事の著者である Michael Mayda 氏は、法医学の画像コンサルタントで、フォトグラメトリや視程解析を専門とした鑑定を行っています。法医学には 1977 年以来携わっており、現在はカリフォルニア州サクラメントを拠点にしています。


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記事参照:
2017 年 10 月 16 日
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Forensic Photogrammetry: A Case Study