
ソフトウェア開発ライフサイクル (SDLC) におけるセキュリティの組み込みは、もはや「ベストプラクティス」ではなく「必須条件」となっています。DevSecOps は、セキュリティを開発の初期段階から全員の責任として組み込むことで、DevOps モデルをさらに進化させたアプローチです。現代の企業においては、開発からデプロイメントまでのワークフローを効率化するために、このような統合的な取り組みが求められています。
JFrog プラットフォームは、ソフトウェア サプライ チェーン全体にわたって、セキュリティ、コンプライアンス、自動化をシームレスに統合することで、この DevSecOps モデルを実現します。本ブログでは、Artifactory、Xray、Distribution などの JFrog の統合ツール群を活用し、コードのコミットから本番環境へのデプロイに至るまでのプロセスで、いかにセキュリティ、可視性、制御性を確保しながら DevSecOps ワークフローを強化できるかをご紹介します。
JFrog プラットフォームによるエンドツーエンドの DevSecOps
JFrog は、セキュリティと効率を確保しながらチーム間の連携を強化できる、包括的なツールセットを提供しています。その仕組みを簡単にご紹介します。
この統合は、開発フェーズから始まります。開発者は地震の IDE (統合開発環境) に組み込まれた JFrog 拡張機能を利用することで、Git リポジトリとスムーズに連携できます。コードが変更されてマージリクエストが作成されると、FrogBot が自動で脆弱性スキャンを実行し、開発者の作業を妨げることなくコードの品質を維持します。
コードが Git リポジトリにプッシュされると、Azure Pipelines や Jenkins などの CI/CD パイプラインが自動的にビルドプロセスを開始します。このフェーズでは、JFrog Artifactory がユニバーサル リポジトリ マネージャーとして重要な役割を果たし、成果物 (アーティファクト) の安全な保管を実現します。これらのアーティファクトは、JFrog Xray によって徹底的にスキャンされ、脆弱性やライセンスのコンプライアンス違反がないか確認されます。これにより、安全で適切なコードのみが次のステップへと進みます。
スキャンを通過したアーティファクトは、JFrog Distribution によって適切な環境へと確実に配布されます。これにより、さまざまなロケーションで効率的なデプロイと実行時の保護が可能になります。
この後のセクションでは、開発から配布に至る各フェーズを詳しく解説し、ソフトウェア開発パイプライン全体にわたって JFrog の統合がどのようにセキュリティとガバナンスを自動化し、連携と効率性を高めているのかを紹介していきます。下図では、ソフトウェア開発の各段階で JFrog のコンポーネントがどのように統合され、セキュリティとガバナンスを支えているかを視覚的に示しています。

1. IDE 連携によるシフトレフト セキュリティ ~ JFrog Xray の活用
開発者にとって、常にセキュリティが最優先とは限りません。しかし実際には、セキュリティは開発者のワークステーションから始まっています。そこで JFrog は、IntelliJ IDEA、Visual Studio、Eclipse などの主要な IDE 向けに拡張機能を提供しており、Xray と直接連携させることで、依存関係やソースコードの脆弱性をリアルタイムでスキャンできるようにしています。
主な機能
- コンテキスト情報付きのソフトウェア構成解析 (SCA)
- シークレット検出およびトークンの有効性チェック
- Infrastructure as Code (IaC) のセキュリティ スキャン
- 静的アプリケーション セキュリティ テスト (SAST)
開発者がコードを書くと、Xray が既知の CVE (共通脆弱性識別子) を検出し、修正に向けた具体的なアドバイスを提示します。これにより、脆弱なコードがコードベースに取り込まれるのを防ぐことができます。
下のスクリーンショットでは、Xray が IDE に統合され、開発中のコードに含まれる脆弱性をリアルタイムで通知している様子を示しています。この例では、プロジェクト内で使用されている lodash の依存関係の一部に脆弱性が見つかっています。画面右側のパネルには、該当する CVE の詳細情報と推奨される対処方法が表示されており、開発者がコードをコミットする前に自発的にセキュリティ対応を行えるよう支援しています。




2. ビルド前のセキュリティ対策 ~ JFrog Curation の活用
JFrog Curation を活用することで、既知のセキュリティ リスクやライセンス上の問題を抱えるコンポーネントを、ダウンロード前の段階でブロックすることが可能になります。
たとえば、CVSS スコアが 7 〜 10 の npm パッケージをすべてブロックするというポリシーを設定することで、重大な脆弱性を含むパッケージのダウンロードを未然に防ぐことができます。これにより、開発が始まる前の段階でセキュリティを担保する「事前防御」が実現されます。


3. コードコミット後の Git リポジトリ解析 ~ JFrog Frogbot
コードがコミットされると、JFrog Frogbot が Git リポジトリをスキャンし、新たに導入された脆弱性を検出します。これは IDE での対策に続く「第二の防御レイヤー」として機能し、開発後期でのリスクを早期に発見、対処することで、パイプラインの先に進む前に問題を封じ込めることができます。
以下の画像では、GitHub Actions ワークフロー内で Frogbot を実装している例をご紹介します。



4. プル リクエスト時の自動検証 ~ Frogbot によるセキュリティ チェック
プル リクエストが作成されると、Frogbot が変更内容を自動的にスキャンし、問題が検出された場合は修正提案を含むプル リクエスト (リメディエーション PR) を自動で作成します。これにより、脆弱な依存関係のアップグレードなどを開発者に積極的に提案します。
この仕組みにより、コード レビューのプロセスにセキュリティを組み込み、Git プラットフォーム上でリアルタイムにフィードバックを提供することが可能になります。



Frogbot によるスキャンが完了すると、GitHub のプル リクエスト画面上でその結果を確認できます。以下の例のように、検出された脆弱性や推奨される対応内容が一覧で表示されます。


※この自動化により、レビュー工程にセキュリティが組み込まれ、開発者はリアルタイムで最新の情報を得ることができます。
5. CI パイプラインとの連携 ~ ビルドとスキャンの自動化
プル リクエストが承認されると、Azure DevOps のパイプラインが以下の処理を自動的に実行します。
- アーティファクトの作成
- ビルド情報の生成
- ビルド成果物に対する Xray スキャン
ビルド情報は変更の追跡性を提供し、Xray によってリポジトリに保存される前に脆弱性を確実に検出できます。
以下は、実際に使用されている CI パイプラインスクリプトの例です。

ビルド情報の生成を担当するステージ

ビルド情報が JFrog Artifactory に公開されるステージ

JFrog Xray がビルド情報をスキャンし、検出された脆弱性を通知するステージ

※アーティファクトがリポジトリに到達する前に、セキュリティ上の問題が検出、通知されます。
6. アーティファクトのデプロイ ~ Artifactory による一元管理
検証済みのアーティファクトは、バイナリの中央リポジトリである JFrog Artifactory にデプロイされます。Xray のウォッチ機能やポリシーが有効化されていることで、Artifactory は新規および更新されたビルドを常時スキャンし、コンプライアンス違反や脆弱性を検出します。
これにより、継続的なガバナンスと迅速なフィードバック サイクルが実現します。


7. リリース ライフサイクル管理 ~ 安心してプロモーションを実行
アーティファクトは署名付きのリリースバンドルとしてまとめられ、開発 (DEV) からテスト (QA)、本番 (PROD) 環境へと段階的にプロモートされていきます。各プロモーションには、メタデータ、Xray のスキャン結果、テストの証拠が含まれます。
JFrog エビデンス コレクションは、リリース準備におけるすべての工程を記録し、コンプライアンスやセキュリティ チェックの監査対応に備えた完全な証跡を提供します。規制の厳しい業界では、こうしたドキュメントが承認や監査の際に極めて重要な役割を果たします。



8. セキュアな配布 ~ グローバルかつ改ざん防止
リリース バンドルは、JFrog Distribution を通じて本番環境へ安全に配布されます。これにより、以下の点が保証されます。
- 改ざん不可能なイミュータブルな配布
- 監査可能なデプロイの記録
- エッジノードを介した地理的なレプリケーション

リリース バンドルの配布が成功すると、Distributions セクションでエッジノードやバージョンの詳細を確認できます。今回の例では、エッジノードは「hts」、配布されたバージョンは「1.1.0」です。

以下は、バージョン 1.1.0 に含まれているパッケージの詳細です。この例では、パッケージ名は「example-project-app」となっています。

9. エッジノードへの配信 ~ パフォーマンス向上と実行時の保護
リリース バンドルは JFrog のエッジノードにキャッシュされ、アーティファクトを実行環境の近くに配置することで、レイテンシーを低減します。これにより、エアギャップ環境でのデプロイにも対応でき、配布されたパッケージの真正性も保証されます。
以下のスクリーンショットでは、リリースバンドルのバージョン 1.1.0 に含まれる「example-project-app」パッケージが、エッジノードにデプロイされていることが確認できます。

まとめ
急速に変化する業界基準に対応するために、JFrog プラットフォームは、強力なバイナリ管理、継続的なセキュリティ対策、エンタープライズ向けの自動化を統合した、現代的な DevSecOps のモデルを提供します。
JFrog を SDLC 全体に導入することで、企業は次のようなメリットを得られます。
- 開発からデプロイまでをカバーする「シフトレフト」型セキュリティの実現
- コンプライアンスや脆弱性に対する自動スキャン
- 改ざん防止された配布と実行時の保護
- ソフトウェア リリースの完全な監査対応トレース
厳格な規制要件下での運用でも、チーム全体でのパイプライン拡張でも、JFrog プラットフォームはセキュリティと信頼性を損なうことなく、高速なイノベーションを可能にします。
実際の動作を確認したい方は、無料トライアルをぜひお試しください。JFrog に関するご質問は、日本正規代理店であるエクセルソフトまでお問い合わせください。
記事参照: How to Optimize DevSecOps Workflows Using JFrog
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