プロジェクトが失敗してしまう原因とは

失敗プロジェクトとは?

まず、「プロジェクト」の定義についてお話しましょう。Project Management Institute (PMI) によると、プロジェクトは開始、終了、プロジェクトの範囲、リソースから定義される一時的かつユニークなもので、目標に向かって機能するものです。プロジェクトには、普段一緒に仕事をしない人たちが含まれることがよくあります。

プロジェクト管理の学問領域は、プロジェクトの要件を満たすための、知識、スキル、ツール、テクニックの適用に関するものです。多くの組織は長い間プロジェクト管理を行っていますが、プロジェクト管理の専門職が採用され始めたのは 20 世紀半ばからです。現在、プロジェクト マネージャー向けの認定資格がいくつかあります。

「プロジェクトの失敗」の定義については組織ごとに異なります。多くの場合、プロジェクトにおける予算、期限、またはスケジュールの超過を意味します。また、利害関係者の満足度の低さも挙げられます。もちろん、失敗はこれらの要因の組み合わせからなる場合もあります。

プロジェクトが失敗すると、(特にそれが失敗すると予想していなかった場合) それに取り組んでいた人々の士気を落とす可能性があります。

「プロジェクトは初めに計画した通りに進むことはほとんどなく、予期しない変更などに対応する必要があります。しかし、失敗への対処がプロジェクト マネージャーの成長に繋がります。すべてのプロジェクトの失敗がひどいものというわけではありません。管理していたプロジェクトが失敗してしまうと、エゴや自尊心を傷つけますが、次に何をすべきか、何をすべきでないかを考えるための、大きな教訓となります。それは常に学習経験であり、そのように考えるのが大切です」と PMI ニュージャージー支部会長の Jersey Chapter 氏は述べています。

プロジェクトが失敗する主な原因は?

プロジェクトが失敗する理由を特定するのは難しいです。失敗の引き金になる出来事が発生する場合もありますが、通常は、多くの問題が表面化した後にプロジェクトが失敗します。その主な原因は、不適切な計画、不十分なリソース、リーダーシップの欠如やガバナンスが効いていないことが挙げられます。

「プロジェクトの修正を求められた時点で、たいてい大きな問題が発生します」と、失敗したプロジェクトの修正に関する 2 冊の本『Rescue the Problem Project』と『Filling Execution Gaps』の著者である Todd C. Williams 氏は述べています。Williams 氏は、自身の会社である eCameron を通じて、企業が失敗したプロジェクトの救済を支援しています。

要求のあった企業に到着したら、Williams 氏は迅速に評価を行います。このプロセスを、大きな事件に巻き込まれ、緊急治療室に運び込まれた患者の治療を例に挙げています。さらにこの例えを広げると、大量の出血がある場合、最初のステップは止血です。そして次に、何をすべきかを考えます。Williams 氏はプロジェクトにも同様のプロセスを使用し、明らかな問題を制御してから、その原因を探します。

上記で述べたように、プロジェクトの失敗には主に 3 つの根本となる原因があります。それは、不適切な計画、不十分なリソース、リーダーシップの欠如とガバナンスが効いていないことが挙げられます。

企画:

  • 目標とビジョンの定義の欠如
  • 時間や予算などの不適切な見積もり
  • 不十分なリスク管理

リソース:

  • チームの問題 (対人関係の問題も含む)
  • 予算や時間不足

リーダーシップとガバナンス:

  • 意思決定の問題
  • 利害関係者からの期待に対する理解が不十分
  • プロジェクトの追跡とコミュニケーションが不十分

「ほとんどの人は、プロジェクトがうまくいかないとき、それは、プロジェクトまたはチームにおいて何か問題があったからだと思っています。しかし、ほとんどのプロジェクトでは、経営幹部がプロジェクト管理の観点から自らの行動を理解していないことがよくあります。経営幹部にはプロジェクト管理の経験がなく、必要な知識を持っていない場合があります」 (William 氏)

1. 不十分な計画によるプロジェクトの失敗

計画はプロジェクトを開始する前に行われますが、多くの場合、プロジェクトの失敗はこの最初の段階で決まります。失敗の原因が計画ミスであったにも関わらず、それがプロジェクトの後半になるまで明らかにならない場合もあります。

プロジェクトを始めるとき、多くのマネージャーは三角形を念頭に置きます。PMI では、この概念を「鉄の三角形」と呼んでいます。

鉄の三角形は、範囲、時間、コストの 3 つの要素からなり、これらの要素は品質に影響を与えるプロジェクト管理の制約を示しています。プロジェクトを始めると、マネージャーは三角形を可能な限り正三角形に保とうとします。プロジェクトが進行するにつれて、1 つの要素の変更は他の要素に影響を与えるため、要素間での調整を行うのはマネージャーの責任になります。

計画に関する大きな問題の 1 つは、範囲に関係していることが多くあります。プロジェクトの範囲に変更があると、多くの場合は、より多くの予算、時間、および人員が必要になります。目標、目的、成果物が不明確だと、プロジェクトの範囲の変更につながる可能性があります。プロジェクトが複雑すぎたり、単純化しすぎて当初の計画範囲に収まらない場合もあります。

Williams 氏は、組織は範囲の変更について話すときに「スコープ クリープ」という用語の不正確な使用が多いと述べています。定義上、スコープ クリープとはプロジェクトに対する制御できない変更を指しますが、たとえば、誰かが変更指示を出し範囲が正式に変更された場合、変更は制御されているため、それはスコープ クリープとはみなされません。

範囲の変更に加えて、時間とリソースに関する誤った見積もりが問題を引き起こす場合もあります。比喩的に言えば、組織の目がお腹よりも大きくなり、その結果、プロジェクトがチームの能力や時間、利用可能なリソースに対して過大になってしまいます。プロジェクトに必要な時間を不正確に見積もると、非現実的な時間と人員の投入につながり、最終的にはプロジェクトの失敗につながります。

「プロジェクトは、新しい分野における新しいことへの取り組みであり、その過程で常に予期せぬ問題が発生します。すべて未知の世界なのです。家の装飾や照明の設置をプロジェクトと例えると、どれくらい装飾や照明の設置に時間がかかるか、照明は明かりがつくかをはじめに確認するでしょう。しかし、その後、照明を屋根に持っていくと、何らかの理由で照明の明かりがつかないことがあります。ここで次の仕事では、問題を解決できるように、なぜ明かりがつかないのかを原因を探ります」 (Williams 氏)

期待の相違もプロジェクトの失敗につながる可能性があります。プロジェクト プランナーは、プロジェクトに求められる品質や基準について異なる見解を持っている場合があります。これらの相反する意見が競合すると、品質よりもスケジュールと予算が優先され、プロジェクトの失敗へとつながってしまいます。

最悪のシナリオに備えて計画を立てることは、リスク管理の一環です。ほとんどのプロジェクトで問題や挫折は避けられず、それらに対する計画を怠るとプロジェクトが失敗する可能性があります。起こり得るすべての出来事を予測するのは不可能です。そのため、当初の計画よりも多くの時間や費用がかかる場合に備えて、緊急時対応計画を立てておく必要があります。

「プロジェクトの内容に関係なく、必ず何かの問題が発生するでしょう。プロジェクトに対して適応的なアプローチをとらない場合、ほとんどの場合、プロジェクトは徐々に悪化するだけです」(Williams 氏)

2. リソース不足によるプロジェクトの失敗

不適切な計画はプロジェクトが失敗する主な理由の 1 つですが、リソースの問題もプロジェクトの失敗につながる可能性があります。

間違った人員選択や、プロジェクトにおける人手不足は、失敗につながります。適切な人員を待つのではなく、プロジェクトに参加してくれる人員を探すのは、プロジェクトに必要な専門知識の欠如を意味する場合があります。利害関係者やプロジェクトのクライアントに、資格のある人員を選択するプロセスに参加してもらうと、熟練度のギャップを避けられます。

「プロジェクト管理には手法だけでなく、創造性や洞察力、柔軟性が必要であり、それらが失敗の要因となる場合もあります。多くの場合、プロジェクトの改善や調整を行うための重要なフィードバックがなく、プロジェクト マネージャーは、自信をもって意見を主張するための適切なツールを持ってません。重要なのはコミュニケーションであり、そのコミュニケーションは下から上に伝えるべきです。上級のリーダーは、プロジェクトがどのように行われるかを理解していない可能性があります。その場合、リーダーは、具体的にどのようなタスクを遂行する必要があるか、詳細を把握していないでしょう」と、プロジェクト マネージャーとして経験豊富な Global PMI Partners の共同創設者 Stefan Hofmeyer 氏は言います。

プロジェクトでは、普段一緒に仕事をしない人たちとの関わりが多いため、チームの問題が頻繁に発生します。遂行方法の誤りによりプロジェクトが失敗したり、対人関係の問題や摩擦によってチームが混乱に陥ったりします。

チームメンバー同士やプロジェクトリーダーとの調整とコミュニケーションが、成功と失敗の分かれ道となります。リーダーはチーム メンバーの個々の役割と責任を明確にしておらず、それが混乱を引き起こします。

「失敗したプロジェクトには、人間関係に関する問題が数多くあります。コミュニケーションにより同じ認識を持っていると思えますが、実際はそうではありません」(Williams 氏) プロジェクト マネージャーは範囲、スケジュール、予算の観点から考えますが、経営幹部は価値と収益について考えます。これらの用語の意味は大きく異なります。

チーム メンバーが、特定の方法でプロジェクトを行う理由を理解していない場合、プロジェクトに対する不安や納得感の欠如につながりかねません。ひいては、こうした感情が説明責任の欠如や態度の悪さにつながります。

トレーニングは不可欠です。プロジェクトを成功させるには、プロジェクトに関わる全てのメンバーに、個々で必要なスキルを理解してもらいましょう。トレーニング要件を検討する際、起こり得るテクノロジ上の問題や、タスク固有の機器の必要性の見落としがよくあります。テクノロジを適切にテストしたり、テクノロジの問題に関するフィードバックに対処したり、トレーニングを提供したりしないと、プロジェクトは失敗に終わってしまいます。

予算と人員に関しての非現実的な見積もりは、失敗の原因となる可能性があります。プランナーは、経営陣やクライアントにとってプロジェクトがより魅力的に見えるように、予算と人員の両方をカットしてしまう場合もあります。プロジェクトに対する不十分な時間の割り当ても、手抜き作業に終わる可能性があります。

さらに、Hofmeyer 氏が「消極的抵抗」と呼んでいる「自分がやっている仕事を信じていないため、そのまま行動を起こし、時にはその仕事を行わない」ことがあります。このタイプの人は、プロジェクトの全体像を把握する批判的思考者とは対極です。

チームメンバーが持つ異なるスタイルや特性への理解が、プロジェクトの成功には不可欠です。Hofmeyer 氏は、プロジェクトを始める際に、リーダーがすべての答えを持っているわけではない、とメンバーが認識したほうがいいと提案しています。このアプローチは、批判的思考を促進し、チーム メンバー間での消極的抵抗を抑制する効果があります。


Hofmeyer 氏はまた、プロジェクトグループ内の文化の違いに注意を払うのも推奨しています。たとえば、物事がうまくいっていないときでも、常に「はい」と答え、前向きになるような教育文化の中で育った場合、危険信号を知らせるために声を上げるられない人もいます。

3. リーダーシップとガバナンスによるプロジェクトの失敗

プロジェクトは、計画やリソースが原因だけでなく、リーダーシップの欠如やガバナンスが効かないことによりプロジェクトの失敗につながる可能性があります。

「私たちは『イエス』と答える人ばかりの世界にいます。ノーと言うのは傷つきますが、イエスと言うと、物事の進捗が遅くなる場合があります」(Williams 氏) この現象により、新しい項目がプロジェクトの範囲に追加され、時間不足や予算超過が発生し、プロジェクト失敗に繋がります。

リーダーシップの欠如は、必ずしもプロジェクト マネージャーの能力が低さを表しているわけではありません。慣習や価値、コミュニケーションのスタイルや環境などの文化が支援されていなかったり、経営幹部のリーダーシップまたは利害関係者間の同意が欠如していたりする可能性もあります。意思決定へのクライアントの関与の欠如も、プロジェクトにとって致命的となるでしょう。

たとえば、経営幹部が強くこだわるプロジェクトは、最初から失敗する場合があります。なぜなら、そのようなプロジェクトは論理的な根拠がないところから始まるからです。つまり、経営幹部は、コンセプトが会社全体の目的や目標にどのように適合するかを考慮していないため、審査や実行段階にすら進めないでしょう。

リーダーシップとコミュニケーションの欠如は、しばしば密接に関連しています。チーム メンバーが自分の役割や責任を明確に理解していないと、プロジェクトが失敗する可能性があります。また、タイムリーなフィードバックも重要です。

「過剰にコミュニケーションし過ぎてしまうことがあるのですが、誰かが『あ、それは知らなかった』と言うと、問題が明らかになったり、誤解やミスを修正したりする機会になります」 (Balaban 氏)

場合によっては、プロジェクト マネージャーが特定のプロジェクトに必要なスキルを欠いていたり、次の内容を実行できていなかったりします。

  • スケジュールの更新
  • 十分なチェックポイントとマイルストーンの作成
  • チームで何が起こっているかを監視または制御

プロジェクト マネージャーは、プロジェクトを必要以上に複雑にすることがあります。タスクを小さく分割すると、プロジェクトをスムーズに進めるのに役立ちます。一方で、マネージャーが、一部のタスクがどのように相互依存しているのか (他のタスクが完了していないと特定のタスクを開始できないなど) を説明していない場合、誰かが自分が行っているタスクが完了するのを待っていると知る余地もなく、プロジェクトは失敗に終わってしまいます。

ただし、計画が行き過ぎてしまう場合もあります。プロジェクト マネージャーはプロジェクトを過度に設計し、先のことを計画しすぎて、たとえ小規模のタスクであっても相互関連性を強いることが多くあります。各グループごとに必要なところまでプロジェクトを計画するよう、Hofmeyer 氏は提案してます。そうすれば、個人やチームはそれぞれのレベルで小規模なタスクを追跡できるようになります。

プロジェクトの失敗が続く理由

失敗につながる最も顕著な兆候を示しているプロジェクトであっても、その失敗が続く場合があります。これは、警告サインに注意を払わなかったり、警告サインを無視したりするなどの単純な理由で発生します。

すでに多くの時間と資金を投資している場合、失敗したプロジェクトに固執してしまうものです。この考え方を持って進むと、意思決定者は、プロジェクトを中止するとすでに費やした資金を無駄にするか、失敗を認めることになるという誤った信念にとらわれてしまいます。

「そのほとんどはプライドと決断力の無さから来るものでしょう。人々はこれが思ったより難しいと認めたくないのです」 (Williams 氏) また、プロジェクトを継続しなければならない状況もあるでしょう。Williams 氏は、作業中に家の水道が切れてしまい、水道管を交換しなければいけなくなった、という家のリフォームを例を挙げています。水道管の交換は、当初の工事範囲や予算に含めていなかったというような予想外の出来事は、プロジェクトにおいても発生します。

プロジェクトの各要素が個別には完成していても、それらがうまく組み合わさって機能しない場合があります。プロジェクト全体がうまく機能していない状態でも、リーダーはプロジェクトを改善し続けようとすることがあります。


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