Docker は当初から、開発者が効率的かつ安全にソフトウェアをビルド、共有、実行できるよう支援することに注力してきました。現在、Docker Hub は 1,400万 以上のイメージと月間 110億回を超えるプル実績を誇り、グローバル規模でのソフトウェア デリバリーを支えています。このスケールだからこそ、現代のソフトウェアがどのように構築されているか、そしてそれを守る上でどのような課題があるのかを深く理解することができています。
こうした背景から、Docker ではセキュリティをプラットフォームの中核に据えています。信頼性の高い「Docker Official Images」、透明性を高める SBOM (ソフトウェア部品表) 対応、リアルタイムで脆弱性を可視化する「Docker Scout」、さらにローカル開発環境を保護する「Hardened Docker Desktop」など、これまでのさまざまな Docker の取り組みは、ソフトウェア サプライ チェーンのセキュリティを誰でも使いやすく、すぐに活用でき、開発者を中心に据えたかたちで強化することを目指しています。
そして今、Docker はその取り組みをさらに一歩進めます。
Docker Hardened Images (DHI) の提供を開始しました。これは、本番環境に最適化されたセキュリティ重視のコンテナー イメージです。
DHI は単なるスリム化や最小構成にとどまりません。攻撃対象領域を最大 95% 削減し、最初からリスクを最小限に抑える設計になっています。各イメージは Docker が厳選、管理し、常に最新状態に保たれ、既知の CVE (脆弱性) がほぼゼロの状態で提供されます。Alpine や Debian といった広く使われているディストリビューションに対応しているため、互換性を損なうことなく、既存の開発環境にもスムーズに導入できます。
さらに、すでに利用しているツールとの高い親和性も確保。Microsoft、NGINX、Sonatype、GitLab、Wiz、Grype、Neo4j、JFrog、Sysdig、Cloudsmith といった主要なセキュリティおよび DevOps プラットフォームとの連携により、スキャン ツールやレジストリ、CI/CD パイプラインとのシームレスな統合が可能です。
お客様から寄せられている声
Docker は日々、急成長中のスタートアップからグローバル企業まで、さまざまな開発チームと会話していますが、共通して聞こえてくるのは、次のような課題です。
まず増えているのが、「ソフトウェアのすべての構成要素が本当に信頼できるのか」「改ざんされていないとどう証明できるのか」といったインテグリティ (完全性) に対する懸念です。依存関係が増えるほど、それを自信を持って説明するのが難しくなっています。
次に挙げられるのが、攻撃対象領域の拡大です。多くのチームが Ubuntu や Alpine のような汎用的なベースイメージから開発を始めますが、時間が経つにつれて不要なパッケージや古いソフトウェアが蓄積され、攻撃者に狙われやすい状態になってしまいます。
そしてもちろん、運用負荷の増大も大きな悩みです。セキュリティ チームは大量の CVE (脆弱性情報) に対応を迫られ、開発者は新機能のリリースよりもパッチ対応に追われる日々。脆弱性スキャナーが常にアラートを出し、依存関係が集中管理されていることでプラットフォーム チームにも負荷がかかり、開発者は手動でアップグレードしながら、どうにか現状を維持している状態です。こうした問題は一部の企業だけでなく、業界全体に共通する構造的な課題となっています。
まさにこうした現場の声をもとに設計されたのが、Docker Hardened Images (DHI) です。
Docker Hardened Images の特徴
Docker Hardened Images は、既存のコンテナーを単にスリム化したものではありません。セキュリティ、効率性、実用性を最初から徹底的に考慮して、いちから構築された新しいベースイメージです。あらゆるチームの現場に自然にフィットするよう設計されています。
以下の 3 つの主要な観点から、現場に実際の価値を提供します。
シームレスな移行
DHI は、既存の開発フローにそのまま組み込めるよう設計されています。他のミニマル系やセキュリティ重視のイメージのように、ベース OS を変えたり、Dockerfile を書き直したり、ツールを手放したりする必要はありません。Debian や Alpine など、すでに多くの開発者が使っているディストリビューションに対応しているため、導入は非常にスムーズです。
実際、DHI への切り替えは簡単で、Dockerfile の 1 行を書き換えるだけで対応できることもあります。
柔軟なカスタマイズ性
次に挙げられるのは、セキュリティと柔軟性の絶妙なバランスです。セキュアであることは、使い勝手を犠牲にすることを意味してはいけません。
Docker Hardened Images (DHI) は、証明書、パッケージ、スクリプト、構成ファイルなど、現場で必要とされるカスタマイズを柔軟にサポートしながら、堅牢な基盤はしっかり維持します。
必要なセキュリティ レベルを確保しつつ、自社環境に合わせたイメージの調整が可能です。
Docker Hardened Images (DHI) は、いわゆる distroless (ディストロレス) の思想に基づき、シェルやパッケージ マネージャー、デバッグ ツールといった不要でリスクの高いコンポーネントを徹底的に排除しています。開発中は便利なこれらの機能も、本番環境では攻撃対象領域を広げ、起動時間を遅くし、セキュリティ管理を複雑にする要因となります。
DHI ではアプリケーションの実行に必要な最小限のランタイム依存関係だけを含めることで、より軽量で高速かつセキュアなコンテナーを実現。最大で 95% の攻撃対象領域の削減につながり、初期状態から強固なセキュリティ体制を構築できます。
自動パッチ適用と迅速な脆弱性対応
パッチの適用とアップデートは自動かつ継続的に行われます。Docker は、上流のソースコードや OS パッケージ、すべての依存関係における CVE (脆弱性情報) を監視。更新が公開されると、DHI のイメージは自動的に再ビルドされ、厳格なテストを経たうえで、新しい署名付きのイメージとして公開されます。これにより、手動対応なしで、常にセキュアかつ検証済みのバージョンを運用できます。
さらに、主要なコンポーネントをソースから直接ビルドすることで、重要なパッチの反映を迅速化し、脆弱性の早期解消を可能にしています。重大度が「Critical」または「High」の CVE には、公開から7日以内に対応。一般的な業界水準よりも迅速で、エンタープライズ向けの SLA によって、さらなる安心も提供します。
本番環境での実証 ~ 社内での活用事例
Docker では、複数の社内プロジェクトにおいて DHI を実際に本番環境で使用し、その効果を検証しています。中でも印象的な例が、Node.js のベースイメージを Hardened 版に切り替えたケースです。
標準の Node イメージを DHI に置き換えたことで、脆弱性の数はゼロになり、パッケージ数は 98%以上削減されました。
この削減は単なるイメージサイズの問題ではなく、攻撃対象領域の縮小、管理対象の部品数の減少、セキュリティ チームやプラットフォーム チームの運用負荷の軽減に直結します。結果として、より強固なセキュリティ体制とシンプルな運用を同時に実現できました。まさに、DHI の設計思想が実際に成果を上げた一例です。
今すぐ始めましょう
Docker Hardened Images は、攻撃対象領域の大幅な削減、パッチの自動適用、既存ワークフローとのシームレスな統合によって、開発現場に安心と効率をもたらします。
開発者は本来の仕事である「ものづくり」に集中でき、セキュリティ チームは必要な安心感を手に入れられます。今こそ、よりセキュアなコンテナー活用を始める絶好のタイミングです。
Docker Hardened Images に関するご質問がございましたら、エクセルソフト株式会社までお問い合わせください。
エクセルソフトは Docker の Preferred Reseller として、Docker Desktop を販売しています。Docker 製品のライセンスや機能に関するご質問、製品デモのご要望を承っています。お問い合わせはこちらから。

*本記事は、Docker 社が提供している以下の記事から抜粋・転載したものです。
Introducing Docker Hardened Images: Secure, Minimal, and Ready for Production
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