リソース分解構造 (RBS) とは?
リソース分解構造 (Resource Breakdown Structure: RBS) とは、プロジェクトに必要なすべてのリソースを階層的に一覧、分類したチャートのことです。リソース (人員、設備、資材、サービスなど) を種類や機能ごとに細分化し、プロジェクト ライフサイクル全体を通して配分できるようにします。
チームは Excel などのツールを使用して、簡単に RBS を作成、共有できます。多くのチームは、このチャートをツリー ダイアグラムとして表示します。
RBS の図はリソース計画の基礎となるものであり、プロジェクト マネジメントにおけるリソース計画のガイドで詳しく学ぶことができます。これらの概念は PMP (Project Management Professional) 試験にも頻出するため、資格取得を目指す場合は必ず理解しておくべき重要な要素です。
RBS と WBS (作業分解構造) の違い
RBS と WBS は異なりますが、相互に補完し合うツールです。RBS は「誰、何が必要か」に焦点を当て、WBS は「何を行うか」に焦点を当てます。両方を併用することで、プロジェクト計画とリソース配分を改善できます。
RBS は、プロジェクトのすべてのリソースを「人材」「設備」「資材」などのタイプ別に整理します。一方、WBS は実際に行う作業を明確にし、全体目標から始めて、次の 4 つのレベルに段階的に分解します。
- フェーズ (段階)
- 成果物 (デリバラブル)
- タスク
- サブタスクまたは活動
WBS は、合意された条件に基づいて行うべきすべての作業をまとめた “やることリスト” のようなものです。一方、RBS は “誰、何が必要かリスト” であり、その作業を実行するために必要な人、資材、機械をまとめたものです。これらはレシピのように一緒に使うべきです。WBS が手順を示し、RBS が材料を示すのです。
ー Gravity Designers & Interiors 社 Thyagaraj K 氏 (契約/計画エンジニア)
RBS と WBS を連携させることで、責任分担マトリクス (Responsibility Assignment Matrix: RAM) または RACI チャートを作成し、プロジェクト全体で「誰が何を担当するのか」を明確にできます。
RBS に含まれる要素
RBS には、プロジェクトを完了するために必要なすべてのリソースが含まれます。これには、人的リソース、設備、資材、施設、サービスやベンダーなどが含まれます。各カテゴリをさらに細分化することで、プロジェクト全体を通じてリソースを効率的に配分できます。
たとえば、人的リソースは職務 (プロジェクト マネージャー、デザイナー、開発者など) や部門 (マーケティング、エンジニアリング、オペレーションなど) 別に整理できます。部門横断的なチーム構成が一般的なため、チーム間の共有リソースや外部サポートも考慮する必要があります。
RBS を使用する理由
RBS は、プロジェクト マネージャーがリソースを整理、配分、監視しやすくするためのツールです。
明確で視覚的な階層構造を作ることで、計画精度を高め、コスト見積もりを支援し、リソースの過剰利用や不足のリスクを減らします。
RBS がなければ、どんなリソースが必要かをただ推測するしかありません。RBS があれば、誰がどこに必要かを計画でき、チームの過剰予約を防ぎ、コストを管理できます。
ー Gravity Designers & Interiors 社 Thyagaraj K 氏 (契約/計画エンジニア)
主な利点
- より正確な予算策定: 作業前に必要なリソースを特定することで、コストをより正確に見積もることができます。
- チームの役割と責任の明確化: 人的リソースを役職や部門別に整理することで、重複を防ぎます。
- リソース配分の改善: リソースを視覚的に把握することで、設備の過剰・過少利用を防げます。
- スケジュールと計画の向上: リソースの利用可能状況を把握することで、現実的なスケジュールを立てやすくなります。
- リスク管理の強化: 何がいつ必要なのかを明確にすることで、リソース不足や依存関係による問題を未然に防ぎます。
RBS の作成方法 (ステップバイステップ)
- プロジェクト範囲の定義
プロジェクトの全体目標、主要な成果物、マイルストーンを特定します。
プロジェクト憲章 (チャーター) や作業範囲記述書 (SOW) を確認して、期待値を明確にし、後のスコープ逸脱を防ぎます。 - 必要なリソースの特定
プロジェクトに必要なすべてのリソースをリストアップします (人的リソース、設備、資材、施設、時間、予算など)。
部署をまたいで考え、外部ベンダーや支援担当者も含めるようにします。 - リソースのカテゴリ分け
リソースを論理的なカテゴリに整理します。一般的には、人材、設備、施設、サービス、ベンダーなどに分類します。 - 各カテゴリを詳細に分解する
上位レベルのリソースカテゴリを、より具体的な要素に分解します。
たとえば「人的リソース」の下では、作業を完了するために必要な個々の役割やチームを特定します。
以下は、一般的なリソースカテゴリとその代表的な項目の例です。
| カテゴリ | 例 |
|---|---|
| 人的リソース |
開発者 プロジェクト マネージャー カスタマー サポート テクニカル ライター データ アナリスト |
| 物的リソース |
ノートパソコン サーバー 実験装置 オフィス用品 |
| 施設 |
オフィス スペース 会議室 データ センター |
| サービス ベンダー |
外部コンサルタント マネージドサービス プロバイダー 法務サポート マーケティング代理店 |
外部チームと連携したり、複雑な成果物を管理したりする場合は、より詳細で包括的な RBS を構築するのが効果的です。例えば代理店パートナーと仕事をする際、開発、デザイン、戦略などの機能別だけでなく、スキル レベル、技術的専門分野、さらにはクライアントが求める言語スキルでも分類します。これにより、多言語サイトの立ち上げや特定プラットフォーム向けの広告キャンペーンなど、どの段階でも人員不足が起きないようにしています。
また、RBS を本当にプロジェクト成功に役立てたいなら、単なる形式的な資料にとどめないことが重要です。スプレッドシートの限界を超え、スケールできるプラットフォームを選ぶことが成果に直結します。
ー DesignRush 社 Gianluca Ferruggia 氏 (ジェネラル マネージャー)
- RBS テンプレートのダウンロード
基本的な RBS テンプレートをダウンロードし、通常の命名規則で保存します。 - チャートへのリソース入力
プロジェクト タイトルを追加し、各リソース カテゴリに具体的なリソースを記入します。 - リソース ボックスの追加/削除
必要に応じてボックスや線を移動、追加、削除し、構造を整えます。 - レビューと検証
チーム全体で RBS を確認し、見落としや不要な項目がないかを確認します。
テスト、トレーニング、ドキュメント、リリース後サポートなども忘れずに含めましょう。
よくあるミスと注意点
- リソースの見落とし: サポート部門や外部パートナーを忘れないようにしましょう。
- 階層構造が複雑すぎる: 詳細化しすぎると管理が難しくなります。
- RBS を更新しない: プロジェクトの進行に合わせて定期的に見直す必要があります。
- 不適切なツールの使用: 複雑なプロジェクトでは、スプレッドシートよりも Smartsheet や Ganttic のようなツールが適しています。
良い RBS と悪い RBS の例
- 悪い例 (複雑すぎ): 同じ職種を細かく分けすぎて、構造が煩雑になっている
- 悪い例 (単純すぎ): 広いカテゴリにまとめすぎて、役割の違いが不明確
- 良い例: 必要な詳細を保ちつつ、冗長さを避け、役割と責任が明確
AI を活用した RBS 作成
AI は RBS 作成の初期段階で有効です。
プロジェクトの種類に基づいてリソースリストを自動生成したり、既存の WBS を基に各タスクに必要なリソースを提案させたりできます。
サンプル プロンプト例:
- 「この WBS に対して必要なリソースを挙げてください」
- 「以下のリソースを人材、設備、サービス、施設に分類してください」
- 「モバイル アプリ開発プロジェクトの RBS をカテゴリ別に作成してください」
私はプロジェクトタイプに基づいたリソースリストの提案に AI を使ったことがあります。時間の節約になり、良い出発点を与えてくれますが、AI が実際の経験を置き換えることはできません。AI はあくまでツールであって、プランナーではないのです。
ー Gravity Designers & Interiors 社 Thyagaraj K 氏 (契約/計画エンジニア)
まとめ
リソース分解構造 (RBS) は、プロジェクト成功のための基盤ツールです。RBS を作成することで、予算、スケジュール、チーム構成の精度が向上し、プロジェクト全体の可視化が進みます。明確な RBS によって、誰が、何を、いつ行うかを体系的に把握でき、計画と実行の一貫性が確保されます。
RBS は一度作って終わりではなく、プロジェクトとともに進化する “生きたドキュメント” として活用することが重要です。リソースやスケジュールの変更に合わせて随時更新し、常に現状を反映させることで、リスクを最小限に抑えられます。
Smartsheet で RBS とプロジェクト管理を統合する
Smartsheet は、RBS をプロジェクト計画と連携させ、リソースを一元的に管理できるクラウドベースのプラットフォームです。
タスク、担当者、予算、進捗状況をリアルタイムで可視化できるため、プロジェクト マネージャーはより正確な計画と柔軟な調整を行えます。
RBS を Smartsheet 上で運用することで、次のような利点があります。
- リソース配分の最適化: 人材や設備を動的に割り当て、過剰/不足を防止
- チーム コラボレーションの強化: 全員が同じ最新情報にアクセスでき、更新が即座に共有されます
- スケジュールと予算の管理: RBS に基づいたリソース使用量を自動的に反映し、計画変更にも迅速に対応
- レポートと可視化: リソース稼働率やコストをグラフ化して分析し、意思決定をサポート

Smartsheet のリソース管理機能を活用すれば、RBS を静的な図表ではなく、プロジェクト進行とともに進化する動的な管理ツールとして活かせます。
これにより、チームの生産性を維持しながら、プロジェクトの品質とスケジュールを確実にコントロールできます。
エクセルソフト株式会社は Smartsheet のゴールド ソリューション パートナーとして、製品購入前後のサポートや導入支援 (テンプレート作成など) を提供しています。Smartsheet に関してご質問がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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