フォトグラメトリを使用した測量およびマッピング

フォトグラメトリ (写真測量) は、測量と地図作製の分野において長い歴史を持っています。フォトグラメトリは、ポイント測定やポイント クラウドの生成に使用できます。ライダー (LiDAR: Laser Imaging, Detection and Ranging) と比較すると、 フォトグラメトリ技術を使ったポイント クラウドの生成は、費用対効果が高く、ポータブルで、また汎用性も高いため、これまでユーザーの間で強い支持を得てきました。

しかしながら、ここ近年では、測量専門家の間でフォトグラメトリが新たな関心の高まりを見せています。手頃な価格で市販されるようになった無人航空機、つまりドローンの台頭がこの傾向の引き金となっています。ドローンは、フォトグラメトリを容易にする多くの利点を提供しているため、その技術への関心は高まる一方です。

ここに至った背景を理解するためにも、まず地上測量におけるフォトグラメトリの魅力について注目してみましょう。

地上測量におけるフォトグラメトリの利点

フォトグラメトリとは、一連の 2D 写真から 3D モデルを生成するプロセスのことです。測量の分野では、まず同じポイントの写真を別のアングルから複数枚撮影します。それらの画像をPhotoModeler などのフォトグラメトリ ソフトウェアに読み込ませると、画像がベースラインに置き換えられ、そのデータを使用して該当するポイントの標高を三角測量します。このプロセスを繰り返すことによって、エリア全体の詳細なメッシュ モデルが作成できます。

フォトグラメトリの代替技術として、高密度ポイント クラウドを生成する方法には、ライダー (LiDAR、別名レーザー スキャニング) の使用が挙げられます。ライダーは、パルス レーザーを該当のポイントに向かって放射し、反射されるまでの時間を測定します。したがって、フォトグラメトリとは異なり、単一のダイレクトな視線だけを必要とします。このため、ライダーの使用は、植生豊かなエリアのマッピングなど、特定のアプリケーションにおいてはよりふさわしい方法となります。

このような技術的な相違点にも関わらず、以下の理由からフォトグラメトリは非常に魅力的な選択肢として認識されてきました。

  1. 費用対効果の高さ: ライダー装置は高価で、適切な操作を行うには専門知識を必要とします。フォトグラメトリで必要とされるのは、デジタル一眼レフカメラと、標準的なコンピューターで使用できるソフトウェアのみです。
  2. 入手の容易さ: ライダーは、専門的な機器や操作スタッフを必要とするため、短期間で入手することは困難です。フォトグラメトリ機器は、測量技師のトラックに容易に搭載でき、誰にでも操作することができます。
  3. 汎用性の高さ: フォトグラメトリの技術は、汎用的なイメージング ツールとして進化しました。ライダーは、機器が大がかりであること、高解像度の画像を得るのが困難であることなどの技術的な制限のため、より具体的なユース ケースに限られています。

これらの利点により、特定の種類の地上測量には、フォトグラメトリの方がより魅力あるオプションとなります。地上ベースのライダーの使用もそれなりの需要はありますが、アクセスのしやすさと多様性により、フォトグラメトリのほうが多くのシナリオにおいてデフォルトの選択肢となりました。

ところが、航空測量においてはその限りではありません。上に挙げたような利点の多くがここでも通用しますが、航空写真測量には、昔から航空機の確保、というひとつの大きな弱点がありました。高価で操作に手間がかかり、キャプチャできる標高やアングルが制限される、といった難点を持つ、特殊な航空カメラを搭載した航空機を借りることにより、せっかくのフォトグラメトリの長所が打ち消されてしまいます。こういった事情により、航空写真測量かライダーかという選択基準は、従来なかなかはっきりしないものとなっていました。

商用ドローンの登場により、そのすべてが変わりつつあります。

ドローンによる航空写真測量の変革

ドローンは軍事アプリケーションとして長年利用されてきましたが、商用として公で使われるようになったのは比較的最近のことです。これまでの飛行機と異なり、テクノロジの長所を理想的に補強するドローンの登場により、測量におけるフォトグラメトリに大々的な革命がおこりました。

まず何より、ドローンは手頃な価格で入手できます。ドローンを使ったフォトグラメトリが可能になってからというもの、一般的な測量アプリケーションにおけるフォトグラメトリの人気が上昇しただけでなく、「マイクロマッピング」と呼ばれるまったく新しい種類の市場が生まれました。マイクロマッピングでは、5 キロ平方未満の小さなサイトの測量が行われます。

以前は、このようなプロジェクトは有人航空機で測量を行わなければならず、非常に非経済的でした。高い動員コストと長期にわたるプロジェクトのタイムラインのために、ほとんどの測量会社はこの手の仕事を請け負うことができませんでした。しかし、測量技師のトラックに簡単に収まるドローンの使用により、リソースを迅速に動員し、このような小さなプロジェクトは 1 日以内に完了することが可能となったのです。

さらに、位置調整、標高レベル、狭い空間での飛行といった点ではドローンの方が有人航空機より汎用性が高く、より多くの測量プロジェクトに活用することができます。

たとえば、ドローンでは頭上の障害物の問題を解決するのに利用できます。ドローンの多くは、「ウェイポイント」と呼ばれる自動飛行経路をプログラミングできます。このウェイポイント テクノロジにより、狭い空間での正確な移動が可能となりますが、人間のパイロットでは同様の飛行は不可能です。これに加え、ドローンはサイズもコンパクトなため、樹冠その他の障害物の下でも容易に撮影ができます。

ドローンによるフォトグラメトリ vs. ライダー

これらは、ドローンが航空測量の世界を大きく転換させた例のほんの一部です。フォトグラメトリとライダーの両方がこの転換による恩恵を受けていますが、フォトグラメトリが勝者であることはまぎれもなく明らかです。

その理由は、ドローンがフォトグラメトリのコアとなる強み、すなわち価格の手頃さ、入手の容易さ、および汎用性の高さに直結しているからです。高価な航空機レンタルのボトルネックから解放されたフォトグラメトリは、地上同様に空中でも魅力的な選択肢となりました。

それとは対照的に、ドローンベースのライダーは非常にアクセスが困難です。コンパクトなドローンのライダー システムも存在しますが、そのような短距離システムも、従来のライダーと同様にコストと希少性の問題があります。一方、高品質のカメラは $500 以下で入手可能で、プロフェッショナル仕様のドローンも、$1,000 以下で購入可能です。どちらも一般的な電器店で手に入れることができます。人気の高いドローン (DJI など) には、いまやフォトグラメトリ プロジェクトに適したカメラも含まれています。

さらに、コスト削減のためにローエンドの UAV 向けライダーを選択すると、空中ライダーの主要な問題点である精度の低さが、さらにその度合いを増す結果となってしまいます。

UAV 向けライダーの精度問題

以前より、空中ライダーはおもにふたつの理由から地上ライダーに比べて精度が低いという難点を抱えていました。ドローンベースのライダーを使用することにより、それらの要因がさらに悪化してしまう可能性があります。

問題となる第一の要因は、位置情報の不正確さにあります。ライダーで正確な測定を行うには、センサーと測定ポイントの正確な位置を知る必要があります。これは、地上ベースのライダーにおいては、測定ポイントが近距離にあり、また完全に静止しているため、比較的簡単なことです。しかし、空中ライダーでは、センサーは長距離にわたり、またいくらかの動きも伴っています。位置関係を正確に把握することが困難な場合、測定値に大きな誤差が生じる結果となります。

この問題を解決するために、測量航空機には位置情報の精度を向上するためのリアルタイム キネマティック (RTK) GPS システムが装備されていることがよくあります。この技術は、ハイエンドのドローンには含まれるようになってきましたが、市販のドローンのほとんどには含まれていません。つまり、測量技師は、価格と精度どちらかの選択を迫られてしまいます。これは決して良いトレードオフとは言えません。

ふたつ目の要因は、角度測定の不正確さにあります。最新の軍事用ライダー センサーをもってしても、角度精度は最高で 1/100 度の範囲です。これは十分に高精度のようにも聞こえますし、また実際に地上ベースのライダーにおいては十分な精度でもあります。しかし、センサーが現場の空上を飛行する航空機にある場合には、大きな差異が生じかねません。

たとえば、地上 3,000 フィート (約 900 メートル) を飛行する有人航空機における 1/100 度のオフセットは、地上では 16 cm のサンプル距離を意味します。ドローンには低空飛行できる利点がありますが、マウントできる軽量センサーの精度は非常に低く、誤差は1/10 度程度です。この場合、テクノロジがまだ追いついていないため、よりハイエンドのモデルを選択するオプションも存在しません。

これらの理由により、空中ライダーは地上ベースのライダーに比べ、(15-37 cm の範囲という見積もりにもあるように) 精度の低いデータを生成します。ドローンベースのライダーには洗練されたテクノロジが存在しないため、この問題はさらに深刻化します。

ドローンによるフォトグラメトリ: 限られた予算での高精度の実現

UAV 向けライダーの精度問題とは対照的に、ドローンによるフォトグラメトリでは、手頃な価格で簡単に入手可能な機器を使用して、非常に高品質の画像データを手に入れることができます。

そのおもな理由は、ドローンで撮影された各写真が、フレーム内でキャプチャされたすべてのサイト データの完全な記録であることです。位置情報やセンサーの方向などの補足的な情報に依存していません。代わりに、フォトグラメトリ ソフトウェアでは、フレーム内の異なるピクセル間の関連性に基づいてモデルを構築します。

また、フォトグラメトリのモデルは、何百、何千枚もの重複した画像を基に構築されるため、ソフトウェアがエラーを排除し、各地理的ポイントをモデル内で正確にとらえます。さらに 精度を高める方法として、地上基準点 (GCP) を設定することができます。GCP は、マーキングされ、座標を有する地上の既知点で空中からも確認でき、モデル構築段階で基準点として使用できます。

すべてのステップが正しく実装されていれば、フォトグラメトリによるモデルは一般的に+/- 8cm、または必要に応じてはさらに優れた精度で生成されます。しかも、それは現在入手可能な市販の機器で簡単に実現できます。さらなるメリットとして、これらのモデルはフルカラー、高解像度でレンダリングされるため、視覚的に理解し、解釈するのが大変容易になります。

ドローンとフォトグラメトリ: 最適の組み合わせ

まとめると、ドローンは、価格の手頃さ、入手の容易さ、および汎用性の高さというフォトグラメトリの強みをさらに強化します。ドローンを使ったフォトグラメトリにより、測量技師はコスト削減と運用上のチャレンジ解消を実現しつつ、より精度の高い航空測量データをキャプチャすることができます。

フォトグラメトリは、測量技師にとってこれまでも主要なテクノロジでしたが、ドローンの台頭により、さらなるレベルへと発展を遂げました。PhotoModeler では、この現実を認識し、ドローン写真データ用に特別にデザインされたフォトグラメトリ スイート製品 (PhotoModeler UAS) を開発しました。ドローンを使ったフォトグラメトリ プロジェクトの利点に関する詳細は、こちらをご参照ください (2018 年 11 月より、PhotoModeler UAS は、 新しく PhotoModeler Premium となりました)。

日本語 FAQ ガイド「カメラを使った測定とモデリングに関する10 の質問: フォトグラメトリ ソフトウェアによる作業の簡易化」はこちら

その他、製品概要、価格、およびライセンス体系などは、PhotoModeler の製品ページを参照してください。


記事参照:
2018 年 1 月 23 日
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