コード ターゲットによるフォトグラメトリの自動化

コード ターゲットとは

誰もが見慣れている製品パッケージのバーコードは、白黒のバーのパターンを読み取るレーザーによってスキャンされ、一意の番号または「コード」に変換されます。このコードは、レジで製品を識別するのに使用されます。

PhotoModeler のコード ターゲットは、バーコードと同様に「何か」 (ここではオブジェクトや現場の 1 ポイント) を一意的に識別しますが、3 つの相違点があります。

  • 円形に印刷されているため、(傾斜を含む) どんな角度からも容易に識別ができる
  • 通常のカメラで撮影した通常の写真内において異なるサイズ、距離、角度で読み取られることを想定されている
  • 中心に円があり、自動的に高精度で位置をマーキングできる

PhotoModeler では、コード ターゲットの使用によって特定のポイントの測定タスクを自動化するため、生産性と精度の向上に役立ちます。

PhotoModeler のコード ターゲットは、RAD (Ringed Automatically Detected) ターゲットと呼ばれます。以下に、999 種類ある RAD ターゲットのうちのふたつを例として挙げています。

コード ターゲットは、写真撮影をする前に現場やオブジェクト上に配置されます。普通の紙に印刷したり、硬めのボードに取り付けたり、または繰り返しの使用にも耐えうるプラスチックでの製作も可能です。サイズに関する唯一の基準は、中心のドットがすべての写真において最低でも 10 ピクセルで撮影されていることです。それよりも大きくても構いませんし、回転、または角度をつけることもできます。

PhotoModeler は、画像全体を自動的に検索してコード ターゲットを認識し、コードを読み取ります。これらのコード ターゲットは、(無理のない範囲内で) カメラに対して斜めに位置していても構いませんし、サイズや向きが異なっていても構いません。複数の写真で同等のコード値が識別されると、それらのポイントはマッチング、あるいは「リファレンス」されます。コード ターゲットを配置したオブジェクトの写真の例を以下に示します。

上の写真では、現場に自然照明があり、ターゲットが車に配置されています。同様の技術を使ったアプリケーションは多数存在しますが、PhotoModeler は、数秒のうちに写真を検索し、コードを識別します。たとえば、コード ターゲット ポイントを配置した写真を 50 枚使用したプロジェクトでは、1 分以内にすべての写真を自動的に検出し、データ処理 (3D 点群処理) します。

PhotoModeler バージョン 2018.0 (2017年 12月 14日リリース) には、コード ターゲット プロジェクトの処理に大幅な改善が施されています。これにより、コード ターゲットの使用により生産性をさらに向上できるようになりました。

RAD ドット ターゲット

コード ターゲットに加え、PhotoModeler は RAD ドット ターゲットおよびプレーン ドット ターゲットをサポートしています。RAD ドットはコード ターゲットに類似しています (中心のドットおよびリング) が、コードがありません。RAD ドットは、一意には識別されません (異なる写真間で照合することはできません) が、PhotoModeler では自動的にマーキングされます。RAD ドットは、点密度の追加に適しています。リングによって、ドットが画像内の他の円形オブジェクトと区別されます。

プレーン ドット ターゲットは、リングもコードもない高コントラストのドットのみで、自然に撮影した写真には多くの円形のオブジェクトが含まれているため、プレーン ドットはそれほど確実に検出されません。プレーン ドットは、複雑ではない画像において小さな点と高密度で作業するのに適しています。コード ターゲットとドット ターゲットは、同一プロジェクトにおいて組み合わせで使用できます。コード ターゲットのチュートリアル動画 (自動車のルーフ ボックス プロジェクト) では、コード ターゲットとドット ターゲットの組み合わせで NURBS サーフェスを作成する過程を紹介しています。

自動化の流れ

第二次世界大戦中のフォトグラメトリによる測定の導入から今日にいたるまで、人間が手動で写真内のポイントを特定し、他の写真の同ポイントにマッチングする、というのがプロセスの主要なステップでした。最新のコンピューター技術の到来により、1980 年代後半からフォトグラメトリのタスクのいくつかがコンピューター化されるようになりました。2000 年代初期には、複数の写真内にある共通のポイントを特定するタスクが自動化の兆しを見せ始めました。

PhotoModeler は、ポイント マッチングの自動化においては長い歴史を持っています。

  • 2003年 4月: コード ターゲットの導入
  • 2009年 1月: RAD コード ターゲットの追加
  • 2010年 10月: SmartPoints の導入
  • 2017年 12月: コード ターゲット処理の大幅な改善

フォトグラメトリ プログラムの中には、スマート機能を使ってテクスチャ付きのサーフェスから自動的にポイント クラウドを抽出するものがいくつかあります。スマート機能の検出は、近年のフォトグラメトリ業界において発展を遂げていますが、初期のオートメーションはコード ターゲットの検出にありました。スマート機能 (PhotoModeler でいうところの SmartPoints) は自然なサーフェスで動作し、ターゲットは不要です。以下に説明しますが、コード ターゲットは SmartPoints とは異なる目的を持っています。

コード ターゲットのメリット

コード ターゲットの検出、マーキング、およびマッチングは自動的に行われ、また迅速で正確です。手動によるマーキングおよび自動のSmartMatch / SmartPoints 機能と比較した場合のコード ターゲットのメリットは以下のとおりです。

  • スピード – 手動でマーキングし、参照するよりも速く、さらに SmartPoints よりもスピーディな場合もあります。
  • 精度 – 中心のドット ターゲットにより、コンピューター ビジョンを介したマーキングでは、1 ピクセル以下の精度でポイントの位置を生成できます。これは、手動、SmartPoints のいずれよりもはるかに高精度です。
  • 低ポイント数 – 特定の測定値を取得する場合や CAD 図面を生成する場合、高密度のポイント クラウドは必要ありません。
  • 希望するポイントを測定 – ターゲットを自分のキャプチャしたいポイントに精密に配置できます。
  • 見えないポイントの測定 – オフセット機能を使って、ペアのコード ターゲットでカメラには見えない第 3 ポイントを特定できます。
  • SmartPoints には適さない題材のモデリング – 光沢があり、テクスチャ加工されていないサーフェスは、SmartPoint テクノロジには適していませんが、コード ターゲットは使用できます。

では、コード ターゲットを使うことにデメリットはあるでしょうか。ターゲットの配置、および除去には時間がかかります。ターゲットのサイズも課題のひとつです (大きなオブジェクトをモデリングするには大きなターゲットが必要となりますが、作成が困難な場合があります)。また、高密度のポイント クラウドを必要とする時、使用できるコードの数に限りがあるため、コード ターゲットでは困難な場合があります (RAD ターゲットの数は最高 999 コードまで)。

コード ターゲットを使ったさらなるオートメーション

コード ターゲットを使ったポイントの自動的なマーキング、マッチングに加え、PhotoModeler にはさらに 2 つの便利機能があります。アクセスの困難なポイントや隠れたポイントを測定するためのオフセット ポイントと、拡大縮小および座標システムの自動設定がそれにあたります。

オフセット コード ターゲットは、固定された既知の距離を持つターゲットのペアです。PhotoModeler はこれらを認識し、そこから第 3 ポイントを算出できます。オフセット コード ターゲットは、ターゲットの配置できないポイント (角やエッジなど) や、希望のポイントがカメラには映らない場合の測定に最適です。

オフセット コード ターゲットの仕組み

コード ターゲットをプロジェクトで使用するもう 1 つのユニークな利点は、プロジェクトの縮尺、移動、回転などを自動的に設定できることです。たとえば、ターゲットをバー スケールの両端に配置すると、PhotoModeler が自動的にプロジェクトの縮尺を設定します。詳細は、こちらの動画 (英語)を参照してください。

プラスチック バーの両端にコード ターゲットを配置し、縮尺を自動化

もう 1 つの興味深い機能は、Faro Scene (Faro レーザー スキャナーと連携したソフトウェア) が PhotoModeler のコード ターゲットを読み取りできる、という点です。異なるスキャンを登録するのにコード ターゲットを使用していますが、レーザー スキャンのデータを PhotoModeler 内の写真と自動的にオーバーレイするのにも使用できます。

コード ターゲット vs. SmartPoints

PhotoModeler では、ポイント認識、マーキングおよびマッチングのオートメーションに、コード ターゲットと SmartPoints の 2 つの方法があります。相違点についてはすでに述べましたが、以下ではいくつかの項目別に直接比較しています。

  コード ターゲット SmartPoints
ポイントのマーキング精度 1 ピクセル以下 1 – 3 ピクセル
ポイントの密度 低密度 高密度
元のサーフェスの種類 不問 要テクスチャ
ユーザー指定のポイント配置 希望する場所にポイントを配置 アルゴリズムに基づいたポイント配置
オフセットを使った見えないポイントの測定 可 (オプション) 不可
縮尺および座標システムの自動設定 可 (オプション) 不可
撮影前の必要条件 ターゲットの配置 特になし
全体的なプロジェクトの精度 非常に高精度 十分な精度

コード ターゲットの使用例およびアプリケーション

PhotoModeler のコード ターゲットは、上記の理由からさまざまな業界で使用されています。ここではいくつかの使用例を紹介します。

階段

PhotoModeler のコード ターゲットを使うことにより、階段や手すりなどの測定を自動化できます。複雑な構造の階段に昇降機を取り付けるのに使用されている例があります。フロリダ州の Harmar 社は、PhotoModeler のコード ターゲットを使って階段昇降機をデザインしていますが、そのうちの 2 つのプロジェクトがこちらです。

階段の段鼻を識別するのにオフセット コード ターゲットが使われています。ターゲットを各段に配置し、階段を下りながら複数の角度から多くの写真を撮影します。ターゲット間の尺度も含まれます。PhotoModeler でポイントおよびオフセットの完全な3D モデルを生成し、CAD ソフトウェアにエクスポートして (たとえば昇降機などの) デザイン作業を続行できます。階段のモデリング プロジェクトの詳細はこちらの動画 (日本語字幕が入りました!) をご参照ください。

キッチン カウンター、バックスプラッシュ、その他のリフォーム

複雑な形状を正確に測定する必要がある家屋の建設や改築には、いくつかのアプリケーション例があります。一般的なものとしては、新しいキッチン キャビネットを設置した後のキッチン カウンター (およびバックスプラッシュ) の測定またはテンプレート化です。高価な石造りのカウンターに、測定誤差の余地はありません。キッチン専門業者やテンプレート製造業者は、キャビネットのベースの上に配置するコード ターゲットのジグ一式と、角にも入り込めるオフセット ターゲットも使用して、正確な測定と CAD 図面を作成できる自動システムを開発できます。

フォトグラメトリにおいて、測定の難しい表面の 1 つにガラスがあります。次に挙げる例では、コード ターゲットとオフセット ターゲットを使ってバスルームのシャワー室のガラス壁をモデリングしています。

工業用部品

工業計測のアプリケーションでは、非常に高い精度を求められる場合が多々あります。サブピクセル ターゲットを使ったフォトグラメトリは、最も適した方法のひとつです。さらに、工業用部品や備品は、しばしば光沢のある金属的なサーフェスを持っています。どちらの基準もコード ターゲットが適したメソッドであることを示します。

興味深い例として、非常に小さなオブジェクトを正確に測定したケースがあります。この工業計測システムでは、わずか 6 cm (2.4 インチ) の移動するサーフェスの精密な配置とサーフェス モデリングが必要でした。コード ターゲットは非常に小さくすることができます。以下は、レーザーでエッチングされたコード ターゲットを使用したシステムのジグです。ジグは幅がわずか 50 mm で、各コード ターゲットはほんの 5.5 mm (1/4 インチ) です。

コード ターゲットは、外付けフラッシュを使ったカメラに光を反射する、再帰反射材を使って作成することもできます。多くの高速道路標識には、再帰反射材が使われています。再帰反射物質を使ってコード ターゲット (またはプレーン ドット ターゲット) を作成する利点は、それらが写真で非常に明るく見えることです。通常は、ターゲットのみが見えるようにカメラの露出を設定します。明るいターゲット ポイントのみを含むよう写真の露出を下げることにより、検出スピードが向上します。これは、写真に多数の小さな円形が見られる現場においては特に重要です。

その他のアプリケーション

コード ターゲットを使った測定やモデリングのアプリケーションは、無限の可能性を秘めています。その他に考えられるアプリケーションとしては、室内や狭いエリアでの高精度の測定、ボートの船体やボート デッキのモデリング、考古学的試料の精密な採寸、事故現場の再現動作追跡、マルチカメラによるジグの精密な校正などが挙げられます。

コード ターゲットの仕組み、および PhotoModeler のコード ターゲット機能についての詳細もご参照ください。


記事参照:
2018 年 1 月 9 日
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