学習者向けの SCORM コンテンツ パッケージの作成方法についての情報を探している方は、SCORM という言葉を目にしたことがあるでしょう。SCORM は、Shareable Content Object Reference Model (共有可能なコンテンツ オブジェクト参照モデル) の略で、e ラーニング コースの国際標準規格です。SCORM 形式でパブリッシュされたコースは、どの学習管理システム (LMS) でも確実に表示できます。たとえ LMS を変更することになったとしても、既存の SCORM パッケージをすべて新しいプラットフォームに移行すれば、何の調整も必要なく完璧に動作します。
SCORM ファイルとは何か、どのように機能するのか、なぜ重要なのか、そしてトレーニング プログラムに SCORM を導入するにはどうすればよいのか、その全体像を知るには、SCORM に関する完全なガイドをご覧ください。この記事では、手動で SCORM コースを作成する 3 つの方法を紹介します。用途に合わせてそれぞれの方法を使用してください。
SCORM ファイルとは?
SCORM ファイルは、コース構成を示すマークアップ ファイルとすべての必要なアセットを含む ZIP ファイルです。以下のものが含まれます。
- XML マニフェスト ファイル (imsmanifest.xml)。一意の識別子、SCORM コースについて説明したメタデータ、各リソースの起動と配信に必要なすべてのファイルをリストしたリソース定義、学習アクティビティの構成など、SCORM 準拠の LMS がコンテンツを配信するために必要な情報がすべて含まれています。
- リソース ファイル。コースと学習アクティビティを構成します。
- スキーマ/定義 (XSD および DTD) ファイル。これらのファイルは、マニフェスト ファイルを参照します。
ツールを使用せずに SCORM パッケージを作成する
ここでは、オーサリング ツールを使用せずに、SCORM パッケージを作成する手順を紹介します。
1. コースに含めるすべての情報を収集する
テキスト、画像、写真、音声、動画など、すべてのソース ファイルを特定のフォルダーに保存して、それらをどのようにまとめるか考えます。紙にコースの計画を書いたり、テキスト エディターを使用して簡単なアウトラインを記述して、ストーリーボードを作成します。
2. コースの HTML バージョンを作成する
LMS を使用する場合、アップロードするすべての学習コンテンツは Web ブラウザーで表示可能でなければなりません。つまり、SCORM パッケージにする前に、Web サイトと同じように、コースを一連の HTML ページにまとめる必要があります。また、HTML ページ内のすべてのテキストとメディアをリンクさせ、プラットフォーム上でも再生できるようにする必要があります。
技術者でない方には、この部分は難しく感じるかもしれません。そのような方にとって e ラーニング コンテンツを開発する最適な方法は、オーサリング ツールを使用することですが (詳しくは後述します)、ここでは別の方法として、手動でコースの HTML バージョンを作成する最も簡単な方法の 1 つを紹介します。
Google ドキュメントでコースを構成し、メニューから [ファイル] > [ダウンロード] > [ウェブページ] を選択して、コースの HTML バージョンをダウンロードします。
Web ブラウザーで表示可能なコースの HTML バージョンを作成したら、SCORM 互換にするための作業に取り掛かります。
3. LMS に必要な SCORM ファイルを追加する
このステップでは、SCORM 用語を使用してコースを説明する一連のテキスト ファイルを作成し、前のステップで作成した HTML コンテンツと一緒に ZIP パッケージを生成します。これは、コースを学習者に公開した後、SCORM 互換製品 (LMS) がコースを処理し、学習統計を適切に記録するために必要です。
次の操作を行います。
- scorm.com からサンプル SCORM パッケージをダウンロードして展開します。
- ファイル構成を確認します。HTML コンテンツとそれを説明する SCORM ファイルがあります。
- 以下のファイルを HTML コースのあるフォルダーにコピーします。
Adlcp_rootv1p2.xsd
Ims_xml.xsd
imscp_rootv1p1p2.xsd
imsmanifest.xml
imsmd_rootv1p2p1.xsd
- テキスト エディターで imsmanifest.xml を開いて、内容を確認します。これは、SCORM コースにとって最も重要なファイルであり、編集する必要がある唯一のファイルです。このファイルには、コースのタイトル、準拠する SCORM 仕様のバージョン、HTML 部分に関連するすべてのリソース ファイルのリストなどの情報が含まれています。
- コンテンツに合わせて、imsmanifest ファイルの <title> のテキストを編集し、コースの HTML リソースへのリンクを変更します。リストの最初のリソースは、コースのほかのすべてのリソースへのリンクが含まれるメインの HTML ファイルでなければなりません。
4. 結果を ZIP にパッケージ化する
imsmanifest をカスタマイズしたら、HTML と SCORM ファイルを ZIP アーカイブに追加します。そして、そのファイルをプラットフォームにアップロードして、処理できるかどうかを確認します。
ここで紹介したように、SCORM コースを自分でパッケージ化するのは面倒であり、ある程度の IT スキルが必要です。この方法は、技術的な知識と忍耐力がある場合にのみお勧めします。
メリット | デメリット |
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変換ツールやオーサリング ツールを使用して既存のファイルを SCORM に変換する
1 つの SCORM コースを手動で作成することは、新たな発見やスキルの習得という点で正当化されます。しかし、オーディオやビデオを多用する複数の SCORM コースを手動で作成する場合、退屈なコーディングと SCORM ファイルの編集に長い時間を要します。
幸いなことに、コーディングとパッケージ化を肩代わりしてくれるソフトウェア ツールがあります。SCORM オーサリング ツールと呼ばれるそれらのツールを使用することで、教育設計に集中できます。SCORM オーサリング ツールは、コースをビジュアル コンテンツから、HTML 形式の SCORM パッケージに変換して、LMS に直接アップロードできます。
しかし、これらのツールはどのようなコンテンツを SCORM に変換できるのでしょうか? コンピューターを使用して、e ラーニング モジュールのイメージをどのように伝えられるのでしょうか? これらの疑問に対する最も簡単で最良の答えは PowerPoint です。10 億台以上のコンピューターにインストールされ、多くの人が一度は使用したことのあるソフトウェアです。さらに、テキスト、画像、音声、動画を一連のスライドに合成することができるので、どのようなテーマの学習モジュールでも作成できます。
PowerPoint プレゼンテーションを作成したら、以下の手順に従って SCORM モジュールに変換します。
- iSpring Suite オーサリング ツールキットをダウンロードして、Microsoft PowerPoint がインストールされている PC にインストールします。
- PowerPoint でプレゼンテーションを開き、[iSpring Suite] タブに移動します。[Publish] をクリックします。
- [Publish Presentation] ウィンドウの左側で [LMS] タブを選択します。
- プロジェクト名を入力して、SCORM パッケージを保存するフォルダーを選択します。[Output Options] はデフォルトのままにするか、必要に応じてカスタマイズします。
- [LMS Profile] ドロップダウン リストで LMS がサポートする形式 (SCORM 1.2 または SCORM 2004) を選択します。
- ドロップダウン リストの横の [Customize] ボタンをクリックすると、コースの所用時間、合格点、コース完了に必要な最小スライド数など、学習者の進捗状況を評価するための異なるパラメーターを設定できます。
- 設定が完了したら、[Publish] ボタンをクリックして、コースを SCORM パッケージに変換します。iSpring が変換処理を完了したら、コースは準備完了です。
iSpring Suite のような高機能のオーサリング ツールは、単なる変換ツールではありません。どのようなレベルの教育設計者でもインタラクティブなコンテンツを作成できます。たとえば、iSpring Suite を使用して以下のようなコンテンツをゼロから作成できます。
- スライド式のコース
- クイズ
- 画面録画
- ダイアログ シミュレーション
- インタラクティブ モジュール
iSpring Suite の機能に関する詳細は こちらをご覧ください。
メリット | デメリット |
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オーサリング ツールを使用して SCORM コースをゼロから作成する
iSpring Suite のような高機能のオーサリング ツールは、単なる変換ツールではありません。どのようなレベルの教育設計者でもインタラクティブなコンテンツを作成できます。たとえば、iSpring Suite を使用して以下のような e ラーニング コンテンツをゼロから作成できます。
- スライド式のコース
- クイズ
- 画面録画
- ロールプレイング
- インタラクティブ モジュール
以下は、iSpring で作成したデモ コースです。
前述の通り、iSpring Suite は簡単に使える PowerPoint ベースのツールキットです。教育設計の経験がなくても、すぐに SCORM コースの作成に取り掛かることができます。プロ並みのコンテンツをすばやく作成したい場合は、キャラクター、背景、テンプレートなど、69,000 以上の e ラーニング アセットを収録した Content Library を利用可能な iSpring Suite Max がお勧めです。
iSpring でゼロから SCORM コースを作成する方法は、以下のビデオ チュートリアルをご覧ください。
iSpring Suite の機能に関する詳細は こちらをご覧ください。
メリット | デメリット |
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SCORM コースの再生方法
SCORM コースは、コンピューターのブラウザーから開くことができます。ZIP パッケージを展開して、起動ファイル (通常は index.html) をクリックするだけです。
LMS を使用している場合は、SCORM パッケージをプラットフォームにアップロードして、アイコンをクリックするだけでコースを実行できます。
SCORM パッケージのテスト方法
多くの場合、SCORM パッケージを本番用の LMS に直接アップロードすることはお勧めしません。LMS の速度にもよりますが、SCORM コースのような大きなファイルのアップロードには時間がかかります。また、テスト中にコースに不具合が見つかった場合 (たとえば、学習者としてコースを受講したらスコアが報告されなかったなど)、問題を修正して新しいファイルに置換する必要があるため、アップロード時間が 2 倍になります。このような障害を回避するため、経験豊富な教育設計者は LMS にアップロードしたり、顧客に送付する前に SCORM パッケージをテストする傾向にあります。
SCORM パッケージをテストする最良かつ簡単な方法は、Rustici Software 社の SCORM Cloud という Web サービスを利用することです。同社は SCORM 標準規格を管理しています。
以下は、Cloud SCORM で SCORM パッケージをテストする方法です。
- こちらから無料の体験版に登録できます。
- [Add Content] ボタンをクリックして、SCORM パッケージをアップロードします。
- ファイルがアップロードされたら、[Launch] をクリックしてコースを開きます。
- 学習者としてコースを受講して、コースが終了したら使用したブラウザーのタブを閉じます。
- Cloud SCORM のステータスが [Complete] または [Passed] に変更されたことを確認します。これにより、コースが本番用の LMS で適切に動作することを確認できます。
このように、Cloud SCORM は簡単に使用でき、教育設計者に大きな価値をもたらします。
まとめ
SCORM 形式は、e ラーニングにおける真のブレークスルーです。すべての LMS 向けに SCORM コンテンツを統一することで、学習者のコストを軽減します。また、学習者の進捗状況と結果を追跡できるため、オンライン学習の効果が大幅に向上します。
幸いなことに、SCORM コースの設計とパブリッシュはかつてないほど容易に行うことができます。しかし、技術的な挑戦を求め、手動で作業を行いたい方にもまだチャンスがあります。この記事では、両者にとって SCORM が未知のものから強力な e ラーニング ツールになるように役立つ情報を提供しました。
この記事を参考に SCORM ファイルを作成し、SCORM Cloud でテストする機会がありましたら、その経験をぜひ共有してください。
製品の詳細につきましては、こちらからお気軽にお問い合わせください。
iSpring Suite Max 30 日間無料の評価版をダウンロードして、オーサリング ツールを使用した SCORM コースの作成もぜひお試しください。
記事参照: ©Copyright 2021 iSpring Solutions, Inc.