トポロジ最適化が抱える 2 つの問題を機械学習で解消する革新的手法とは

自動車や産業機械、航空宇宙分野などのさまざまな製品設計において、「高剛性化」と「軽量化」のように、通常であればトレードオフの関係にある要求に応えたり、これまでの経験や常識にとらわれない斬新な設計案を求められたりするケースがあります。

 このような設計ニーズに対して、最近よく用いられているのが「トポロジ (位相) 最適化」です。その背景には、近年幅広い産業分野で導入が進んでいる金属 3D プリンタ/金属 AM (Additive Manufacturing: 積層造形) 技術の存在があることは言うまでもありません。

 こうした新たな製造/加工技術の登場によって、今まさにトポロジ最適化に取り組みやすい土壌が整いつつあり、従来とは全く異なる新しい構造様式をもつ部品形状を追求できる可能性が高まっています。

 トポロジ最適化とは、シミュレーション技術を用いて、与えられた設計空間や制約条件に基づき、不要な材料を削り、必要な部分だけを残して最適な設計案 (形状) を導出する技術です。少しだけかみ砕いて言えば、既存の設計案からぜい肉をそぎ落とすアプローチです。この手法を製品設計に取り入れることで、冒頭に挙げた高剛性化と軽量化といったような本来両立が困難な設計ニーズを満たすことが可能となります。

図 1 トポロジー最適化解析とは?

トポロジ最適化が抱える 2 つの課題

トポロジ最適化は、高度な設計ニーズに応えていく上で、非常に有用な手法であることに間違いありませんが、既に世の中にはトポロジー最適化が可能な専用ソフトウェアやトポロジ最適化の機能を実装した 3D CAD も存在しています。ある意味で、誰でも手軽にトポロジ最適化を実践できる状況にあるわけですが、大きな問題が 2 点あると言われています。

1 つは「トポロジ最適化を実行する際に入力するユーザー指定の制約条件の決め方が曖昧である」という点です。例えば、質量最小化を目的とする際、体積率や最小/最大部材寸法、最小部材間隔といった制約条件をユーザー自身が決めることになりますが、そこから得られる結果は本当の意味での厳密的な最適形状ではなく、あくまでもユーザーが決めた制約条件に基づく最適形状となります。当然、結果自身も制約条件の設定値によって大きく異なります。実際、現場では所望する性能になるまで “制約条件を変えては解析を繰り返す” といった運用が見られ、そこで用いられる制約条件の付け方もユーザー任せとなっていることが多くあります。また、制約条件と解析結果の相関が読みにくいため、解析に多大な時間を要してしまうことも珍しくありません。

図 2 トポロジー最適化解析の問題点

もう 1 つの問題が「解析結果に含まれる中間密度要素の扱いが曖昧である」という点です。密度法に基づくトポロジ最適化の場合、解析結果は材料密度分布として示されます。その際、材料密度が 1.0 の絶対に必要な領域と、0.0 の全く不必要な領域以外に、完全に分けられない中間的な密度を持つファジーな領域 (中間密度要素) が含まれます。この中間密度要素は論理的な解釈が難しく、あまりにも多いと最終形状にした際に重量過多となってしまうことがあります。このときも現場では、できるだけ中間密度要素が発生しない解析結果が出るまで、ユーザー自身が “制約条件を変えては解析を繰り返す” といったことが行われています。

図 3 トポロジー最適化解析の問題点

これらの問題点を抱えたままの運用を続けてしまうと、期待する最適設計案を導出するまでに手間と時間を費やすことになり、本来より良い製品開発のために活用するはずだったトポロジ最適化が、逆に製品開発の足かせとなってしまう可能性があります。

機械学習をトポロジ最適化に応用するアプローチ

こうした問題点に対して、各種 CAE 解析サービスにも定評のある中央エンジニアリングは “機械学習をトポロジ最適化に応用する” という画期的かつ革新的なアプローチを考案し、既に活用を進めています。

 まず「制約条件の決め方」に関しては、機械学習 (回帰分析) を用いて制約条件とトポロジ最適化の解析結果の因果関係をつかみ、最適結果を効率的に導出するアプローチを採用します。機械学習に必要となる初期サンプリング データについては、複合領域設計性能スタディー、最適化ソフトウェア「Altair HyperStudy」を活用します。制約範囲内で値をランダムに設定してトポロジ最適化解析を実行し、その計算結果を初期サンプリング データとして使用します。このとき、ユーザーは制約条件の範囲を決めるだけとなります。

 回帰モデルの構築では、回帰式が数式で表現できないようなブラック ボックス関数に対して、確立統計的な手法で逐次的に最適解を求めていく「ベイズ最適化」を採用しています。実行済みの解析結果から確率的広がりを持った回帰モデルを推定し、最も有益そうな解析条件を探索して、その条件でさらに解析を実行するという流れを繰り返します。これにより、無駄な解析を省き、効率的に回帰モデルの精度を上げていきます。なお、中央エンジニアリングはこれら一連のプロセスを自動化するために、「Altair OptiStruct」によるトポロジー最適化解析と連動して回帰分析を実行する「AI 自動実行ツール」を Python で独自開発しています。

そして、「中間密度要素の扱い」では、ベイズ最適化によって得られた最適化解析条件の他にも、同等の解析結果で中間密度要素の少ない解がないかを機械学習 (クラスタリング) を用いて特定するアプローチをとります。その際、機械学習・予測分析ソリューションである「Altair Knowledge Studio」を活用します。これまで計算したトポロジ最適化の結果を基にクラスタリングを実施し、先ほどの最適化解析条件と同じクラスタ内に属する候補において、それぞれ材料密度の割合を比べ、最も中間密度要素が少ないものを最適解として選定します。こうすることで、厳密的な最適解に遜色ないトポロジー最適化解析結果を、従来手法よりも効率的かつ迅速に導出できます。

図4 中央エンジニアリングが提案する解決

実際、既存の金属部品 (重さ 5.32kg) に対する軽量化ニーズにおいて、機械学習を用いたトポロジ最適化を適用したところ、導出された最適形状の質量が 2.48kg と約 54% もの大幅な軽量化を実現した他、トポロジ最適化解析の実行回数も従来手法と比較して約 93% も削減しました。さらに、トポロジ最適化後に行う最適設計 (フリー形状最適化) においても全く同じ質量 (2.48kg) で結果を得ることができました。

革新的な挑戦を下支えするアルテアの製品群

さらに興味深いのは、中央エンジニアリングが考案した機械学習をトポロジ最適化に応用するという革新的なアプローチに用いられている各種分析手法や要素技術、ツールなどの多くは、既に世の中にある汎用的なものを活用している点です。これらをうまく取りまとめ、機械学習を用いてトポロジ最適化が抱えてきた問題点に対しメスを入れた中央エンジニアリングの功績は非常に大きいといえるでしょう。

 トポロジ最適化についてはアルテアエンジニアリング社 (以下、アルテア) の「OptiStruct」を採用していますが、「OptiStruct」は、他の製品と比べて解析条件などをかなり細かいレベルで設定できる点が挙げられます。これは解析を専門とする立場からすると非常に都合が良く、逆に言えばアルテアのツールがあったからこそ、機械学習をトポロジ最適化に応用するというアプローチを実現できたといえます。また、忘れてはならないのが「OptiStruct」が密度法に基づくトポロジ最適化手法であり、中間密度要素に対する適切な扱いなしには、最終的な製品形状へとつながる最適解が得られないという点です。

 この中間密度要素の扱いに関しては、本取り組みにおける重要なポイントとなるが、その肝となるクラスタリングの際に用いられる 「Knowledge Studio」 も同じくアルテアが提供するツールです。そもそも 「Knowledge Studio」 は製造業や設計現場での利用に限定したものではなく、幅広い産業分野で活用される機械学習や予測分析のためのツールです。実際、金融やマーケティングといった領域での活用が先行しているとのことで、設計現場での利用、トポロジー最適化への応用といった点で、世界的に見ても非常にユニークかつ先進的な応用事例だといえます。

 これら中央エンジニアリングの革新的な取り組みは、必要に応じてあらゆるツールを活用できるアルテアのライセンス システム「Altair Units」が下支えしています。多様なソフトウェアツールから最適なもの自由に選択可能な、この柔軟なライセンス体系がなければ、さまざまなアルテア製品を駆使した今回の取り組みは実現し得なかったかもしれません。

*本記事は、アルテアエンジニアリング株式会社が提供している以下の記事から抜粋・転載したものです。

トポロジー最適化が抱える2つの問題を機械学習で解消する革新的手法とは