Docker では、開発者やチームが高品質なアプリケーションをより簡単にビルドできるよう支援しています。生成 AIを活用したアプリ開発もその一つです。そこで今回、Docker Desktop 4.40 のリリースにあわせて、GenAI アプリ開発をよりシンプルかつ安全、スケーラブルにする新しいツール群を導入しました。
本記事では、Model Runner や、MCP 機能を備えた強化版 Docker AI Agent などの新ツールのアップデートをご紹介します。また、AI Tool Catalog により、より簡単にスマートな AI アプリやエージェント (MCP ベース) をビルドできるようになります。さらに、Docker Desktop Setting Reporting 機能により、管理者はポリシーの適用状況やコンプライアンスの把握がしやすくなりました。

Docker Model Runner (ベータ版) ~ ローカルでの AI モデル実行をもっと手軽に
Docker Desktop 4.40 でベータ提供を開始した「Docker Model Runner」は、AI モデルのローカル実行をこれまで以上に簡単にします。面倒なセットアップやツール間の移動、インフラの調整は不要。ローカル環境ですぐにモデルの試行、改善を始められるよう設計されています。
今回のベータ版には、以下の 3 つの主要機能が含まれています。
- インストール後すぐに使えるローカル モデル実行
- Apple Silicon での GPU アクセラレーションによる高速化
- OCI Artifacts を使った標準化されたモデル パッケージング
推論エンジンには llama.cpp を採用し、OpenAI API 経由でアクセス可能。モデルの実行は、まるでコンテナーを動かすような手軽さです。Mac ではホストベースの実行により、ハードウェアの性能をそのまま活かして高速動作を実現します。
さらに、モデルは OCI Artifacts としてパッケージ化されているため、既存の信頼されたレジストリや CI/CD ワークフローを活用して、バージョン管理、保存、共有が可能です。詳細は公式ドキュメントをご覧ください。

今回のリリースは、今後の展開に向けた基盤を築くものです。今後は、Windows での GPU サポートや、自分自身のモデルをカスタマイズして公開する機能、そして開発プロセスへのより深い統合が予定されています。Docker Model Runner はまだ始まったばかりで、今後もさらに多くのアップデートや改善をお届けする予定です。
Docker AI Agent ~ MCP 統合と AI Tool Catalog で、よりスマートで強力に
Docker AI Agent のビジョンはシンプルです。コンテキストを把握し、深い知識を持ち、開発者が作業する場所でいつでも利用できること。今回のリリースで、その目標に一歩近づきました!Docker AI Agent はさらに強化され、開発者が Docker エコシステムを活用し、Docker を超えたワークフローの効率化を図ることがより簡単になりました。
Docker に関するすべてをサポートする AI Agent
Docker AI Agent は、以下のような人気のある開発者向け機能をサポートしています。
- シェルコマンドの実行
- Git 操作の実行
- リソースのダウンロード
- ローカル ファイルの管理
さらに、Docker Scout との統合により、Docker エコシステム内の他のツールにも対応しました。これにより、Dockerfile やイメージのセキュリティ分析も実行できるようになっています。
Docker AI Agent を Docker を超えて拡張する
Docker AI Agent は、Model Context Protocol (MCP) を完全にサポートするようになりました。この新しい標準により、AI Agent とモデルが外部のデータやツールと接続され、より強力で特定のニーズに合わせたものになります。Docker AI Agent は、MCP クライアントとして機能するだけでなく、その多くの機能が MCP サーバーとしても公開されるようになりました。これにより、Docker Desktop の GUI や CLI、または Claude Desktop や Cursor など、お好みのクライアントからエージェントとやり取りできるようになります。

AI Tool Catalog ~ MCP サーバーを試すための出発点
Docker Desktop の AI Tool Catalog 拡張機能のおかげで、さまざまな MCP サーバーを探索し、Docker AI Agent を他のツールや他の LLM (大規模言語モデル) にシームレスに接続できるようになりました。これで、複数の MCP サーバーを手動で設定する必要はありません。さらに、API キーなどの MPC サーバーのシークレットを安全に扱い、ログインや認証情報の管理を簡単にしました。
AI Tool Catalog には、Docker Hub にプッシュされたコンテナー化されたサーバーが含まれており、今後も拡充予定です。この分野で作業している方や、MCP サーバーを配布したい方は、ぜひ当社の公開 GitHub リポジトリからご連絡ください。AI Tool Catalog をインストールするには、Docker Desktop の拡張機能メニューからアクセスするか、こちらの手順でインストールしてください。

Docker Desktop Setting Reporting でコンプライアンスを重視
Docker Desktop 4.36 で導入された Setting Management 機能を基盤に、Docker Desktop 4.40 では Docker Business 向けに強力なコンプライアンス レポーティング機能が追加されました。この新しい機能により、管理者は組織全体でユーザーが設定ポリシーにどれだけ準拠しているかを包括的に把握できるようになります。
主な利点
- リアルタイムのコンプライアンス追跡。どのユーザーが割り当てられた設定ポリシーに準拠しているかを簡単に監視できます。これにより、管理者は準拠していないシステムやユーザーを迅速に特定し、対応できます。
- 効率的なトラブルシューティング。詳細なコンプライアンス ステータス情報が、特定のユーザーが準拠していない理由を診断するのに役立ち、解決時間と IT の負担を軽減します。

Docker Desktop Setting Report の使用を開始する
Desktop Setting Reporting ダッシュボードは、現在ベータ版で提供されています。管理者は、各ユーザーに割り当てられた設定ポリシーと、そのポリシーが正しく適用されているかを確認できます。
管理者は Admin Console > Docker Desktop > Reporting に移動することで、レポート ダッシュボードにアクセスできるようになります (近日追加予定)。このダッシュボードでは、すべてのユーザーのコンプライアンス ステータスが一目で確認でき、以下の操作が可能です。
- ユーザー名やメールアドレスで検索
- 割り当てられたポリシーでフィルタリング
- 準拠しているユーザーを非表示にして、問題のあるユーザーに焦点を当てる
- 特定のユーザーに対する詳細なコンプライアンス情報の表示
- コンプライアンス データを CSV ファイルとしてダウンロード
また、ダッシュボードでは、準拠していないユーザーに対してターゲットを絞った解決手順が提供され、管理者は迅速に問題に対処し、組織のコンプライアンスを確保できます。
この新しいレポート機能は、セキュリティとコンプライアンスを維持しながら、さまざまな開発環境での管理を簡素化するエンタープライズ グレードの管理ツールを提供するという Docker の取り組みを強調しています。Docker Desktop Setting Reporting についての詳細はこちらからご覧ください。
まとめ
Docker は、アプリケーション開発を簡素化し、チームのワークフローを改善するために AI ツールの拡充を進めています。Model Runner や、MCP サーバーおよびクライアント サポートを備えた Docker AI Agent、Docker Desktop の AI Tool Catalog 拡張機能などの新しい追加機能は、開発者が AI を使ってアプリケーションをビルドする方法を効率化します。さらに、企業向けツールをより有用で堅牢にし、Docker Desktop Settings Reporting を通じて、管理者がコンプライアンスやポリシーの適用状況をより良く把握できるようにしています。
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*本記事は、Docker 社が提供している以下の記事から抜粋・転載したものです。
Docker デスクトップ 4.40:LLM をローカルで実行する Model Runner、より強力な Docker AI Agent、拡張された AI Tools Catalog
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