API ファーストの開発を強化する API Hub + ReadyAPI Virtualization

今日のソフトウェア環境において、API は単なる技術的なインターフェイスではなく、デジタル化の重要な構成要素です。API ファースト戦略を採用している組織は、より優れた API を開発するだけでなく、イノベーションの加速、スケーラブルなアーキテクチャ、そしてチーム間のスムーズなコラボレーションを促進しています。

しかし、API ファースト戦略への移行は必ずしもスムーズではありません。

考慮すべき要因が多数あります。たとえば、バックエンド サービスを待つ間にフロントエンド チームの開発が停止してしまう、あるいはエンドポイントがまだ存在しないために QA (品質保証) チームがテストを開始できない、といった状況です。これらは、優れた API デザインでさえも失敗に導くボトルネックとなる可能性があります。

SmartBear API Hub と ReadyAPI Virtualization を組み合わせることで、これらの課題に対応し、API ライフサイクルに可視性、スピード、そして予測可能性をもたらすことができます。

API Hub と ReadyAPI Virtualization とは?

API Hub

API Hub は、信頼できる情報の拠点と考えることができます。組織の API が集約された場所で、開発者、テスター、パートナーが、最新の仕様書や環境について情報を共有したり、コラボレーションしたりすることができます。

主な特長:

  • デザイン、ポータル、探索、テスト、コントラクト テストの 5 つの機能でデザイン プロセスのすべての段階を強化します。
  • OpenAPI/Swagger に対応しており、インタラクティブなドキュメントを提供します。
  • バージョン管理、変更追跡、ガバナンスを管理できます。
  • ロールベースのアクセス制御と、API コンシューマーのオンボーディング機能を提供します。
  • DevOps と親和性の高い連携機能と、コントラクト テストが可能です。
  • セルフサービス ポータルと API 検出機能があります。
  • 探索機能と、完全に自動化された機能テストを利用できます。

ReadyAPI Virtualization

ReadyAPI Virtualization は、バックエンドがまだ構築されていなくても、API の動作をシミュレーションできるツールです。OpenAPI の定義やリクエストの例があれば、開発、テスト、デモ用途に使える現実的な仮想サービスを構築できます。

主な機能:

  • REST、SOAP、OpenAPI/Swagger、WSDL、WADL に対応しています。
  • ペイロード、ヘッダー、ロジックに基づいた動的なレスポンスを生成できます。
  • 柔軟なデプロイ (ローカル、Docker、クラウド、CI/CD) が可能です。
  • ReadyAPI Test、ReadyAPI Performance、API Hub の機能とシームレスに連携します。

これらのソリューションを組み合わせるメリット

API Hub と ReadyAPI Virtualization は、それぞれ単体でも強力なツールです。しかし、両方を組み合わせることで、より速く、信頼性が高く、コラボレーションしやすい API ライフサイクルを実現できます。実際のシナリオでは、以下のような効果がもたらされます。

  • フロントエンド開発の停滞がなくなる: バックエンドの準備ができていなくても、仮想 API がそのギャップを埋めるため、UI チームは実装を待たずに開発やテストを進められます。
  • テスト環境における複数の API バージョンの管理が容易に: API Hub の組み込みバージョン管理と変更追跡機能により、チームは常にどのバージョンで作業しているかを正確に把握できます。
  • バックエンドが存在しなくても、パートナー テストを早期に開始できる: モック API を作成し、API Hub を通じて外部の利用者へ公開することで、本番システムに影響を与えることなく、安定した検証環境を提供できます。
  • バックエンドの障害で品質保証業務が中断されない: 実際のサービスが利用できなかったり、不安定だったりする場合でも、仮想サービスがあれば QA チームはリグレッション テスト (回帰テスト)、負荷テスト、機能テストを継続できます。
  • チーム間の連携が大幅に向上: 手動の更新、スプレッドシート、属人的な知識に頼るのではなく、チームは一元管理されたセルフサービス プラットフォームを共有し、実際の API でも仮想 API でも、API の探索や利用をスムーズに行うことができます。

この 2 つのツールがどのように連携して機能するかを理解することは、API ファーストの開発プロセスを強化する上で非常に重要です。関連記事「SmartBear API Hub と ReadyAPI でデザインファーストの手法を取り入れる」を一読し、両者が互いにどのようにメリットをもたらすかについて、より詳細な情報を得ることを推奨します。

詳細ワークフロー:API のデザイン、仮想化、共有

ここでは、一般的なプロジェクトのシナリオを順を追って見ていきましょう。

ステップ 1: API をデザインする

まず、バックエンド チームが OpenAPI 3.0 の仕様書を定義します。これには、エンドポイント、スキーマ定義、リクエスト/レスポンスの例、およびセキュリティ ポリシーが含まれます。

ステップ 2: API Hub に公開する

仕様書が完成したら、API Hub に公開します。公開後、以下のようなことが可能になります。

  • Portal を通じて、ドキュメントが自動生成され、すぐに利用可能になります。
  • チーム メンバーは、Explore を使って API をインタラクティブに探索できます。
  • 権限設定によりアクセスが制御されます。
  • アクセス制御により承認された利用者のみが閲覧できるようになります。

ステップ 3: ReadyAPI で仮想 API を作成する

次に、テスト チームまたは仮想化チームが、以下の作業を行います。

  • 仕様書を ReadyAPI Virtualization にインポートします。
  • 成功、検証エラー、システム利用不可などのレスポンス ロジックを構築します。
  • 「return 400 if loanAmount > 50,000 (融資額 が 50,000 を超える場合は 400 を返す)」などのスクリプト ルールを追加します。

ステップ 4: 仮想サービスをデプロイする

作成したモックは、以下の場所にデプロイされます。

  • 開発者用のローカル マシン
  • Docker を利用した CI パイプライン
  • 共有の QA/統合テスト用 VirtServer

ステップ 5: API Hubで仮想サービスをリンクする

API Hub が更新され、以下の情報が追加されます。

  • 本番環境: 「近日公開」
  • モック環境: VirtServer でホストされている仮想 API

これにより、バックエンドがまだ存在しなくても、利用者は API をテストし、操作できるようになります。

ステップ 6: チームやパートナーに展開する

  • フロントエンド開発者は、安定したモックを使用して統合できます。
  • QA チームは、バックエンドの障害を気にすることなく自動テストを実行できます。
  • 外部パートナーは、サンドボックス環境へのアクセス権を得られます。
  • プロダクト マネージャーは、リアルなシミュレーションを使って機能のデモを行えます。

エンドツーエンドのデモ:API Hub と ReadyAPI Virtualization の活用例

ユースケースの詳細

並行開発を可能にする

  • フロントエンド チームとバックエンド チームが、順に作業を行うのではなく、同期して開発を進められます。バックエンドの開発が遅れても、モック API があるため開発を止める必要はありません。
  • 結果: デリバリーが迅速化され、開発サイクル後半の統合問題が減少します。

パートナー向けサンドボックス環境

  • 本番環境を公開せずにパートナーをオンボーディングしたい場合、API Hub を通じて仮想化された API を提供し、テスト、統合、検証を行ってもらえます。
  • 結果: パートナーのオンボーディングが迅速化し、サポートへの問い合わせが減ります。

バックエンドのダウンタイム中も安定したテストを維持

  • バックエンドが停止しても、QA チームの作業が止まることはありません。仮想サービスが、パイプラインを常に稼働状態に保ちます。
  • 結果: 継続的なテストが可能になり、CI/CD の信頼性が向上します。

プロトタイピングと UX のデモ

  • プロダクト チームはモックを利用して、ローン承認や決済処理といった実際のユーザー フローをライブ デモでシミュレーションできます。
  • 結果: 実際のコードをリリースする前に、ステークホルダーとの認識を合わせ、より良いフィードバックを得られます。

高度な活用パターン

  • コントラクト テスト: 仮想サービスをコントラクト スタブとして使用し、実際のバックエンドが期待通りに動作するか検証できます。
  • カオス テスト: 500 エラーやタイムアウトをシミュレーションし、システムの回復性やリトライ ロジックをテストできます。
  • データ駆動型モック: クエリ パラメーター、ヘッダー、またはボディの内容に応じて、ReadyAPI が異なるレスポンスを返すように設定できます。

まとめ

現代の開発にはスピード、柔軟性、そしてシームレスなコラボレーションが求められており、トップクラスのチームは API ファーストの手法でこれらを実現しています。しかし、デザインだけでは不十分です。最初のドラフトからデリバリーまで、ライフサイクル全体をサポートするインフラストラクチャが必要です。

SmartBear API Hub と ReadyAPI Virtualization を組み合わせることで、開発プロセスをより速く、より信頼性が高く、チーム間の連携が強化されたものにできます。

具体的には、以下のようなメリットがあります。

  • フロントエンド チームが、バックエンド サービスの完成を待つことなく作業を進められます。
  • QA エンジニアは、障害発生時やバックエンドの変更中でも、安定してテストを実行できます。
  • パートナーやインテグレーターは、サンドボックス環境を通じて、早期に安定したアクセスを得られます。
  • プロダクト チームは、バックエンドのコードが全く記述されていない状態でも、実際のユーザー フローのデモを行えます。
  • 全員が、API Hub を通じて、単一のバージョン管理された信頼できる情報源を基に作業を進められます。

これは、API デザイン プロセスを向上させるだけでなく、ソフトウェア開発とリリース全体の質を向上させる方法です。

API ライフサイクルを合理化し、真の並行開発を実現したいのであれば、この組み合わせがロードマップとなるでしょう。


この資料は、SmartBear の Web サイトで公開されている API Hub for Contract Testing University ドキュメントの「Design First With API Hub for Design」にある「Supercharge API-First Development with API Hub + ReadyAPI Virtualization」を参考に作成しました。

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