バラバラな AI ツールをまとめ、更なる効率化へ ―― IT リーダーに求められる戦略

AI ツールの急速な増加は、大企業の IT 部門にとって大きなメリットを生み出すと同時に、大きな悩みを生み出しています。AI はこれまでにないレベルの効率化とイノベーションをもたらしますが、その一方で、法務分野に特化したツールから汎用的なチャットボットに至るまで、利用可能なツールがあまりにも多くなった結果、企業内の AI 利用がバラバラに分断され、全体として統制が難しい状況を招いています。IT 部門にとってこれは単なる管理上の煩雑さにとどまらず、ガバナンス、セキュリティ、さらにはコスト面においても重大なリスクとなっています。現在の状況は、エージェント、業種特化型 SaaS、ローコード プラットフォーム、独自の開発キットまで、多種多様な仕組みが混在し、全体像を把握するのが難しい状態です。

見えない脅威:シャドウ AI

企業が AI 利用のための安全かつ正式に承認された手段を提供できない場合、組織内のチームは業務を効率よく進めるために、必然的に外部の非承認の AI ツールの利用へ流れていきます。こうして生まれるシャドウ AI は、知らず知らずのうちに重大なリスクをもたらします。

  • データ漏洩
    自社の機密情報、顧客データ、あるいは内部のセンシティブな情報が、利用者の意図しない形で外部の公開モデルへ送信されてしまいます。
  • セキュリティ上の欠陥
    監査されていない AI ツールの利用により、企業として求められるセキュリティやコンプライアンス上の統制が取れなくなり、プロンプト インジェクションをはじめとする攻撃に晒されやすくなります。
  • 予測不能なコスト
    チームが高額な従量課金型 API を中央管理なしに利用することで、想定外のコスト増加や予算超過が発生する可能性があります。

避けるべき対応策:失敗する戦略

AI の連携は、統制そのものを目的とするものではなく、AI を効果的に活用するための取り組みです。そのためには、ついやってしまいがちですが、実際には逆効果となる 3 つの対応を避ける必要があります。

  • 全面禁止
    すべての AI ツールを使用禁止にすることは、逆に見えないところでの利用を加速させるだけであり、管理されていないシャドウ AI が確実に蔓延します。
  • 厳格な指令
    トップダウンで承認済みのツールしか提供しない場合、そのツールが使いにくい、もしくは性能不足であれば、結果的に現場の創意工夫を妨げ、ルールを無視した利用を招きます。
  • 放任主義
    「ルール」を定めても、コンプライアンスに対応できる最適な承認済みプラットフォームを提供しなければ、チームは安全に AI を利用する道筋を失ってしまいます。

IT リーダーに求められるのは、利用を制限する「門番」ではなく、現場の活用を後押しする存在になることです。そのために、あらゆる AI 活用を支えられる、安全かつガバナンスの効いた基盤を整える必要があります。

ステップ 1:統制戦略 (枠組みの確立)

AI を効果的に連携させるためには、IT 部門がユースケースを整理・分類し、どのようなガバナンスが求められるのかを理解する必要があります。そのためには、AI ツールをどのように捉えるかという明確な枠組みを確立することが不可欠です。AI ツールは、明確に区別された 5 つの枠組みに分類できます。

5 つの枠組み概要ガバナンスの優先事項
1. AI プラットフォーム実際の AI モデル提供、セキュリティ、API アクセスを担う基盤インフラ(例:Prediction Guard)最優先。データフローとガバナンスを管理する中核的な制御ポイント
2. 汎用的な AI チャットChatGPT、Copilot、Open WebUI などの幅広い公開型アプリケーション。入力可能なデータ範囲について明確なポリシーが必要
3. AI 連携Workday や Teamcenter など、既存ソフトウェアに組み込まれた AI 機能。承認済みの AI プラットフォームにのみ接続する必要がある
4. ローコード/ノーコードn8n、LangFlow など、非エンジニア向けのビジュアル型 AI ワークフロー構築ツール。コンプライアンスは基盤となるプラットフォームに依存
5. カスタム開発
LangChain、LlamaIndex などのフレームワークを用いた、ゼロからの独自開発のアプリ
。最も強固な社内ガバナンスが必要で、AI プラットフォーム経由でのデプロイが前提

このメンタル モデルによって、AI プラットフォームが、重要なガバナンス判断を担う戦略的なレイヤーであることが理解できます。

ステップ 2:制約を決める (IT ブループリント)

プラットフォームを選択する前に、IT 部門責任者は妥協できない要件を整理しておく必要があります。これにより、早い段階で不適切な選択肢を除外し、AI 活用を整理、統合していくための方向性が定まります。

  • データフロー:データはどこに保管すべきか?
    多くの場合、企業ネットワークの外に個人情報、医療情報、知的財産を送信することに制限を設けているか否かが最も重要な判断基準となります。
  • 規制負担
    どのような具体的なコンプライアンス体制 (例:HIPAA、GDPR、業界固有の規制) を満たす必要があるのかを明確にする必要があります。これらの規制要件は、多くの場合、採用可能なデプロイ環境そのものを左右します。
  • デプロイ環境
    ソリューションは、プライベート クラウドの VPC、ハイブリッド環境、またはエアギャップ環境のオンプレミス データセンターで稼働する必要があるかどうか確認しておく必要があります。
  • コスト モデル
    ビジネスは予測可能な固定費を必要としているのか、それとも変動消費に基づく費用でスケールを拡大しても問題ないのか、どれくらいの費用を割けるのかも確認しておく必要があるでしょう。

プラットフォームを自社で保有するのか、それとも外部サービスを利用するのかについて判断するためのこれらの制約が、核心的な意思決定の基本的な設計図を形成しています。

ステップ 3:コントロールの核心 (コア AI プラットフォームの選択)

IT 部門責任者にとって、AI プラットフォームの選択は長期的なガバナンスと財務の安定性にとって最も重要な決定です。この選択によって、データ管理・セキュリティ・コストに対する制御の度合いが大きく変わります。検討すべき選択肢は、大きく 2 つのアーキテクチャに分かれます。

特徴オプション A: 従量課金型 API (外部プラットフォーム)オプション B: セルフホスティング型 AI プラットフォーム(例:Prediction Guard)
データ フローデータは、ネットワーク外のサードパーティのプロバイダーに送信されます。すべてのデータは、キャンパスや組織のネットワーク内に格納されます。
インフラすべてのインフラ、モデル、アップデートは、サードパーティが管理します。組織内でインフラとモデル スタック全体を管理します。
コスト モデル従量課金型の API (トークンごとの支払い)。固定月額料金、ユーザー数無制限、予測可能な予算管理。
柔軟性プロバイダーがサポートするモデルに限定されます。モデルの選択肢を自由に確保。オープンソース モデル、自社開発モデル、厳選されたモデル群の中から用途に応じて選べます。

セルフホスティング型による統制の優位性

セルフホスティング型の AI プラットフォームは、データ主権、固定コスト、デプロイメントの柔軟性といった、エンタープライズで最も重視される要件をすべて満たせる唯一の戦略的選択肢です。IT 部門責任者が求める統制と柔軟性を両立できる点に、その本質的な価値があります。

  • データ主権
    プラットフォームをオンプレミス環境、またはプライベート VPC 上に展開することで、プロンプト データや機密性の高い独自の情報が組織のインフラ外へ送信されることは一切ありません。これにより、規制産業において特に重要となる「データフローの制約」を根本的に解消できます。
  • リスク軽減
    このプラットフォームは、社内におけるすべての AI 利用を集約・管理する、統一された監査可能なゲートウェイとして機能します。データがモデルに到達する前の段階で、リアルタイムの監視や各種セーフガード (PII のマスキング、有害なコンテンツの検知、プロンプト インジェクションの防御など) を適用することが可能です。
  • コンプライアンスの確実性
    インフラを完全に自社で制御できるため、プラットフォームを自社固有の規制要件やポリシーに明確に適合する形で導入できます。これにより、ベンダーが提供する「コンプライアンス対応プラン」に依存する運用から脱却できます。

セルフホスティング型モデルにより、重要な IT 機能は変動するレンタル費用から管理可能で監査対応済みの社内ユーティリティへと変わります。

戦略的トレードオフ (コスト、セキュリティ、予測可能性)

従量課金型 API は初期投資を抑えられる一方で、長期的に見るとコストの増加や戦略的な制約につながるケースが少なくありません。長期的なプラットフォームの健全性を担う IT 部門責任者にとっては、初期コストではなく、総所有コスト (TCO) やリスク要因に目を向けることが不可欠です。

1. 予測可能性と変動コスト
従量課金型 API は利用量に応じてスケールするよう最適化されているため、コストの予測が難しく、大規模に利用した場合には高額な費用が発生する傾向にあります。このような不確実な料金モデルでは、戦略的な予算策定がほぼ不可能となり、AI の利用が急増したタイミングで年度途中の予算危機を招く恐れがあります。一方、Prediction Guard が提供するような固定価格型のデプロイメントは、長期的な利用を前提に設計されています。初期段階ではハードウェアやクラウド計算資源への投資が必要となるためコストは高くなりますが、月額料金は一定で、ユーザー数や利用量に制限はありません。AI 活用を数百人、数千人規模の従業員へと展開していくにつれて、総所有コスト (TCO) の観点では、この固定価格モデルの方が明らかに有利になります。

2. セキュリティと規制対応の負担
データ転送は、セキュリティ上もっとも大きなリスク要因です。従量課金型 API を利用する場合、利用者はサードパーティのセキュリティ体制に依存することになり、あわせて「データがモデル学習に使われない」という約束を信頼する必要があります。さらに、コンプライアンスの観点では、そのサードパーティのデプロイ環境が、自社固有の規制要件を本当に満たしているかどうかを信じなければなりません。一方、セルフホスティング型プラットフォームでは、インフラは自社の管理下にあります。計算基盤 (コンピュート レイヤー) も、オーケストレーション レイヤーも自社で所有します。この完全な制御により、次のようなことが可能になります。:

  • 監査性
    すべてのモデル入力・出力、さらにはモデルのバージョン変更に至るまで、完全な監査ログを保持できます。これは、高度なコンプライアンスが求められる環境においては譲れない必須要件です。
  • ハードウェア選択の柔軟性
    既存のオンプレミス GPU、クラウド上の計算リソース、さらには汎用 CPU のような効率的なハードウェアを組み合わせてプラットフォームを展開できます。これにより、ハードウェアの予算や求められる性能要件に最適化された構成を柔軟に実現できます。

3. モデル選択の自由度とベンダー ロックイン
サードパーティの API に依存すると、利用できるモデルや価格体系がそのベンダーに限定され、ベンダー ロックインに陥りやすくなります。一方、セルフホスティング型プラットフォームでは、AI の基盤インフラとモデルの選択を切り離すことができます。これにより、完全なモデル選択の自由が確保され、IT 部門責任者は、最先端のオープンソース モデルをホストしたり、新しいアーキテクチャを試したり、さらには自社向けにファインチューニングした独自モデルを導入したりすることが可能になります。さらに、それらすべてを統制の取れた単一の環境の中で運用できます。この柔軟性こそが、AI 戦略を将来にわたって持続可能なものにするための鍵となります。

ステップ 4:透明性を促し、現場と調和する AI 活用

AI 活用を組織に定着させる最終段階では、焦点はインフラ設計から文化としての活用促進へと移ります。安全な AI プラットフォームの基盤が整えば、IT 部門責任者は、利用を取り締まる立場から、AI の活用と透明性を後押しする役割へと転換できます。戦略はシンプルです。従業員が進んで使いたくなるほど効果的で安全な仕組みを提供すること――それが、承認されたシステムを自然に定着させる鍵となります。

シャドウ AI に対処するためには、IT 部門が事業部門と積極的に連携し、現場のニーズを正しく理解したうえで、それらを満たす承認済みかつガードレール付きの利用ルートを提供することが不可欠です。このような連携により、最先端の AI 活用であっても、企業としての制約やルールを確実に遵守できるようになります。

以下では、データ ガバナンスとコストの予測可能性を確保しながら、AI プラットフォームが多様なエンタープライズ用途をどのように支えられるのかを示す具体例を 3 つ紹介します。

  • AI コード アシスタント
    社外に自社コードを送信してしまう公開型のコード支援ツールを使うのではなく、IT 部門が専用のオープンソース コーディング モデルを備えた社内 AI プラットフォームを展開します。これにより、開発者は Cursor や VS Code などの普段使っているツールを、プラグイン経由でプラットフォームの標準 API に直接接続して利用できます。これにより、すべてのコードは企業ネットワーク内に留まり、セキュリティとガバナンスを確保したまま開発を進めることが可能になります。
  • Workday や ERP との連携
    事業部門では、ERP システム内の機密性の高いデータをもとに、人事レポートの要約や社内外向け文書の下書きを AI に作成させたいというニーズがあります。ここで承認済みの AI プラットフォームが中継役として機能し、オンプレミス環境でデータを安全に処理したうえで、整形された結果のみを Workday 連携へ返します。これにより、データは企業ネットワーク外へ一切出ることなく、コンプライアンスも確実に維持されます。
  • AI アシスタント開発
    チームは、カスタマー サポートや社内ナレッジ向けなどの用途で、AI アシスタントを迅速かつ手軽に構築したいと考えています。AI プラットフォームは標準 API を通じて各チームに提供されており、LangChain や Vercel AI SDK といった馴染みのある開発フレームワークを使って、独自のアシスタントを素早く開発できます。これらのアシスタントは、プラットフォームに備わるセキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスの各レイヤーを自動的に継承するため、安全性と統制を確保したまま運用できます。

堅牢な社内 AI ユーティリティを提供することで、IT 部門責任者の役割は大きく変わります。統制役にとどまるのではなく、安全性・拡張性・コストの予測可能性を備えた AI を全社に届ける、イノベーションの中核的な加速装置となるのです。

エクセルソフトは、業界特有の規制やセキュリティに準拠するセルフホスティング型の AI プラットフォーム、Prediction Guard の販売代理店として、評価から導入までのプロセスを日本語で支援しています。お見積りに関する依頼、デモのご要望などございましたら、お気軽にご相談ください。

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この記事は、Prediction Guard 社のウェブサイトで公開されている「Harmonizing Your AI Tools: The Strategic Imperative for IT Leaders」の日本語参考訳です。原文は更新される可能性があります。原文と翻訳文の内容が異なる場合は原文を優先してください。

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