作業分解構成図 (WBS) とガント チャート
作業分解構成図 (WBS: Work Breakdown Structures (以下、WBS)) とは、プロジェクト スコープ (プロジェクトの範囲) を含む、プロジェクトにおいて何を達成または構築するのかを示す図です。ガント チャートは、バーを使用してプロジェクトの作業のタイムラインを視覚的に表現したものです。
プロジェクトを成功させるには、明確に定義された目標と完了日が必要なため、WBS とガント チャートはともにプロジェクト計画において重要な役割を果たします。目標とスケジュールは、プロジェクトの費用や人件費のニーズなどさまざまな要素に影響するため、プロジェクトを正しく遂行するために非常に重要です。
建設、建築やソフトウェア開発などの分野では、WBS がガント チャートの開始点となります。この 2 つのツールは、プロジェクトを計画するのに役立ちます。
WBS とガント チャートの違い
WBS は何を行っているかを示し、ガント チャートは作業をいつ進めるかを示します。 WBS では作業を上から下へと階層別に分解します。 ガント チャートは直線的で、左から右へと時間経過を示します。
プロジェクト プランナーは、WBS を名詞に焦点を当てたものとして説明することが多くあります。これは、作業ではなく具体的なマイルストーンや成果の列挙を意味します。たとえば、建物を建築する場合、WBS には基盤、電気系、屋根などの構造の構成要素が示されます。
対照的に、ガント チャートは日付に焦点を当て、プロジェクトの作業の順序を示し、タスク間の依存関係を反映します。依存関係とは、あるタスクを開始または終了できるかどうかが、別のタスクの進捗や完了に依存する作業の関係です。たとえば、壁を塗るには、まず壁を作る必要があります。
これらの関係はクリティカル パスを決定します。クリティカル パスとは、最も長い依存関係のある作業の連鎖を特定し、それらを完了するのに必要な期間の計算することでプロジェクトの期間を決定するのに役立つスケジューリング ツールです。
クリティカル パスに関する詳細やその効果については、こちらをご覧ください。
人工知能アプリケーション開発企業である Rephrase Media の創設者である Matthew Ramirez 氏は、ガント チャートと WBS を比較する際、WBS はプロジェクト計画用、ガント チャートはプロジェクト追跡用として、この 2 つのツールを区別しています。
「ガント チャートとは異なり、WBS ではタスクの実行方法やタイミングが定まっていません。WBS はスケジュールでも、すべての作業やその責任のリストでもありません。プロジェクトに必要なすべてのタスクを WBS に含めると、タスクの見落としやプロジェクトの遅延につながります」と、サーバー コントロール パネルを製造している SpinupWP の CEO である Utah Tousenard 氏は述べています。
プロジェクトの行う際には、2 つのツールをさまざまな方法で使用します。WBS はプロジェクトの過程で大きく変化しない傾向がありますが、ガント チャートは進捗に基づいて頻繁に更新します。これは、プロジェクトの途中で作業内容を大きく変更することが稀であるためです。つまり、プロジェクトの方向性が決まった後は、その基本的な構造は変わらず、通常は進捗管理のためのガント チャートだけが変動します。
しかし、新たに必要な作業の追加、リソース不足、予想外の天候など、予想外の状況ではプロジェクトが遅れたり早まったりします。これらの変更は、通常、ガント チャート上で日次または週次の変更になります。
WBS をガント チャートに変換する方法
WBS は、プロジェクトの最初に作成するものの 1 つです。WBS とその他のプロジェクト情報を使用してガント チャートを作成するには、プロジェクト計画ソフトウェアを使用するか、以下のステップバイステップの手順に従います。
WBS やガント チャートのテンプレートはこちら。
ステップ 1: WBS の作成
WBS は、プロジェクトの最終結果をその構成要素に分割して示します。これらは作業ではなく、具体的な製品や作成物です。
一例として、住宅の建設を見てみましょう。 WBS の一番上に最終製品 (家) を記載します。
その下で、基盤、フレーム、屋根、電気、冷暖房、水道、仕上げなど、さまざまな建築システムと構成要素に作業を分解します。その後、各構成要素をさらに分解します (例えば、「仕上げ」の下に、塗装、床張り、備品を列挙します)。
プロジェクトの複雑さに応じて、各構成要素を何度か分解し続け、各レベルでより小さなマイルストーンを列挙する場合もあります。最後に、マイルストーンを含むガント チャートを作成します。WBS の最小要素は作業パッケージと呼ばれます。たとえば、床張りの WBS 階層では、キッチンの床が 1 つの作業パッケージになる場合があります。
ステップ 2: 各作業パッケージの作業を特定する
作業パッケージごとに望ましい結果を得るため、実行する必要のある作業やタスクを決めます。 WBS は名詞指向ですが、これらの作業はプロセス指向または動詞指向です。
床張りのパッケージの例では、さまざまな部屋とその床のタイプに分割します。 そこから、床張り作業を完了するために必要な作業を決めます。リビング ルームの場合、床の下地敷き、硬材床の施工、硬材のサンディング、硬材のシーリング、乾燥、トップコートの塗布、トップコートの乾燥などが含まれます。よくある間違いの 1 つは、ガント チャートを作成する前にタスクを十分に分解しないことです。
具体的な例としては、リビング ルームの床材に関する構成作業をガント チャートの行に列挙することが挙げられます。
ステップ 3: タスクの順序を設定する
プロジェクトの作業は、依存タスクが存在する場合があるため、適切な順序で行う必要があります。床張りの前に床の下地を敷くという順序は明らかですが、床を乾燥させている間は塗装業者がリビング ルームに入れないという依存関係を追加すると、より複雑になります。したがって、塗装はリビング ルームの床張りの終了に依存します。リビング ルームの床の施工と塗装の間に、硬材のトップコートを乾燥させるための期間を 2 日間スケジュールに組み込む必要があります。
Tousenard 氏は、「WBS からガント チャートを作成する前に、タスクの依存関係を確認しましょう。これは、別のタスクの完了に依存するタスクの識別を意味します。先行タスクと後続タスクの間には、4 種類の依存関係があります」と述べています。
これらの依存関係は次のとおりです。
- 後続タスクを開始する前に、先行タスクを完了する必要がある。
- 後続タスクを開始する前に、先行タスクを開始する必要がある。
- 後続タスクを終了する前に、先行タスクを終了する必要がある。
- 後続タスクを終了する前に、先行タスクを開始する必要がある。
これらの依存関係をガント チャートに示します。その方法を簡単に説明します。
ステップ 4: 各タスクの期間を見積もる
プロジェクト計画の別の段階では、作業を完了するために必要なすべてのリソース (人員、材料、機器など) を特定します。これらは、リビング ルームの床を施工する人がキッチンの床も施工している場合などに、依存関係の要因となります。つまり、別の作業者を追加しない限り、これら 2 つのタスクの同時進行は実現しません。
また、現場準備の際に 2 つ目の油圧ショベルを取り込むと、プロジェクトをスピードアップできるかもしれません。これらの検討や決定は、WBS をガント チャートに変換するプロセスの一部です。
これらのリソース計画を作成したら、各作業の所要時間を見積もります。 開始と終了の間の時間を期間と呼びます。 プログラム評価レビュー テクニック (PERT) など、さまざまな見積もり手法を使用できます。リビング ルームの床の例では、プロジェクト マネージャーは、施工には作業時間と乾燥時間を含めて 9 営業日かかると見積もっています。
ステップ 5: ガント チャートを構築する
ガント チャートの作成に移りましょう。ソフトウェアを使ってこのプロセスを簡素化できますが、スプレッドシートの使用も可能です。
ガント チャートを作成する際には、各タスクをそれぞれの行に入力し、プロジェクトの期間を表す列を作成します。各日ごとに列を設定し、タスクが行われると日ごとにその行のセルを塗りつぶして進行状況を示します。
ガントチャートを手動で作成する場合は、WBS の階層構造を反映すると、プロジェクトの全体像を把握しやすくなります。具体的には、見出し行に作業パッケージの名前 (例えば「仕上げ」) をラベル付けし、その下にインデントをつけて塗装、床材、備品などの細分化されたタスクを入力します。これにより、各タスクの関連性や全体の流れが視覚的に分かりやすくなります。
ガント チャートを作成する際、構成作業 (例えば、リビング ルームの床材敷設) については、それぞれの子タスクの下に行をインデントするか、色分けして視覚的にわかりやすくします。タスクをさらに細かく分解して行を追加し続けてもいいですが、細分化しすぎるとチャートが複雑になり、全体を把握しにくくなります。
プロジェクト計画ソフトウェアの利点の 1 つは、階層をまとめて情報をさまざまな方法で表示できることです。例えば、仕上げ作業や床材作業の概要を確認できます。期間を示す列の塗りつぶしは、子タスクの期間を取り込み、すべての要約されたタスクの開始と終了を反映します。
ガントチャートを作成していくと、塗りつぶしの領域が右に移動します。タスクを完了するとプロジェクトが次の作業に進み、これは時間の経過を示します。次のタスクの期間が始まると、新しい行で再び塗りつぶし表示を行います。また、同時に進行するタスクはガント チャート上で並行して表示され、それぞれのタスクの進捗状況が一目でわかるようになります。
依存関係がほとんどない、またはまったくないタスク (例えばフェンスの設置) がある場合は、適切なタイミングでそれらをスケジュールできます。フェンスの場合は、敷地の整地が終わり、大型機械が出入りする必要がなくなった後に行います。依存関係のないタスクはクリティカル パスには影響しません。
ステップ 6: 依存関係の追加
タスクの依存関係をガント チャート上で矢印を使って表すと、スケジュールの複雑さや潜在的な問題が明確になります。
Convincely 社のソフトウェア UX チーフである Ergy Yong 氏は、「依存関係のあるタスクを明確に視覚化するために、ガント モデルと作業分解構造を活用する練習をしましょう。これをしないと、依存関係に起因する問題が見過ごされ、その結果、誰も問題に取り組まなくなります。なぜなら、問題が視覚化されず、プロジェクトの進行を管理するチャートに反映されていないためです」と述べています。
ガント チャートのタスク間の 4 つの依存関係を以下に示します。
- 後続タスクを開始する前に先行タスクを終了する必要がある場合は、先行タスクのバーの終端から後続タスクのバーの始端に矢印を描きます。
- 後続タスクを開始する前に先行タスクを開始する必要がある場合は、両方のタスクのバーの始端の間に矢印を描きます。
- 後続タスクを終了する前に先行タスクを完了する必要がある場合は、先行タスクのバーの終端から後続タスクのバーの終端に矢印を描きます。
- 後続タスクを終了する前に先行タスクを開始する必要がある場合は、先行タスクのバーの始端から後続タスクのバーの終端に矢印を描きます。
すべてのタスクを入力すると、プロジェクトのクリティカル パスと期間が示されます。これは、最初のタスクの開始から最後のタスクの完了までの時間です。
ステップ 7: 作業のバッファを検討する
経験豊富なプランナーは、予期しない出来事への備えが重要だと理解しています。これには、スタッフの病気や供給の遅れなどが含まれます。これらの突発的な出来事は、プロジェクトの遅延を引き起こすリスクを増加させます。
プランナーは、これらの予測不能な出来事に備えるためにバッファを持たせます。これには、既存の作業に追加の時間を含めるか、時間を考慮するプレースホルダーを追加する方法がありますが、これらは実際の作業を表すものではありません。また、これらのバッファ部分を色分けすると、視覚的に明確になります。
一般的に、多くの顧客はプロジェクトをできるだけ早くプロジェクトを完了させたいと望む傾向があります。なぜなら、プロジェクトの長期化はコストを増加させ、リターンの確保を遅らせるからです。そのため、バッファを最小限に抑えることが求められ、適切なバッファの設定には現実的な視点と効率性のバランスが必要です。
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