AI エージェントは実験段階を越えて、実社会での活用が急速に進んでいます。そして、単なるテキスト生成から「実際に行動を起こす」存在へと進化する中で、「Model Context Protocol (MCP)」は、エージェントとツールをつなぐ標準プロトコルとして注目を集めています。
MCP はシンプルかつモジュール型で、Web の基本原則に基づいて設計されています。そのため MCP は、これまで複雑で統一されていなかったエージェントとツールの連携を、コンテナー技術がアプリのデプロイを一変させたように、標準化し、よりシンプルにできる可能性を秘めています。
しかし、今まさに私たちは典型的な転換点に立たされています。MCP のクライアントとサーバーは非常に大きな可能性を秘めていますが、現時点ではまだ本番環境で使えるレベルには達していません。ツールの発見は断片的で、信頼の構築は手動対応、セキュリティや認証といった基本機能も、いまだに暫定的な方法で対応されているのが現状です。
プロトタイプから本番運用へと進むには、いくつかの要素が「譲れない条件」になる必要があります。
まず、開発者には信頼できるツール発見のための一元的なハブが必要です。もはや、Discord のスレッドや X (Twitter) の返信を探し回る時代ではありません。また、ツール提供者にとっても、そのハブは重要な配布チャネルとなります。新しいユーザーにリーチし、Claude、Cursor、OpenAI、VS Code などのプラットフォームとの互換性を確保する手段となるのです。現在、そのようなチャネルは存在していません。
次に、コンテナー化は標準であるべきです。リポジトリをクローンして依存関係を手動で解決するような煩わしさは、もはや不要です。さらに、認証情報の管理はシームレスかつ安全である必要があります。一元管理され、暗号化され、現代的なパイプラインに適した設計でなければなりません。
そして最後に、セキュリティは最初から設計に組み込まれているべきです。サンドボックス化、アクセス許可の設定、監査ログの記録など、信頼性の確保は後付けではなく、初めから考慮されている必要があります。
しかも、それらはすべて「シンプルであること」が前提です。すべての開発者が簡単に使えるものでなければなりません。
この MCP を取り巻く状況は、クラウドやコンテナーが登場した初期の頃を思い起こさせます。大きな可能性がありながらも、まだ荒削りな部分があり、それゆえにこそ巨大なチャンスが広がっている、そんなタイミングです。
これは決して抽象的な話ではありません。こうした課題は、新しい技術が転換点を迎えるたびに、開発者たちが必ず直面してきた現実の問題です。
クラウド黎明期、Docker は「不変性」と「分離性」を標準に据えることで、混沌に秩序をもたらしました。認証を組み込み、Docker Hub という一元的なハブでツールを簡単に見つけられる仕組みを立ち上げることで、単にデプロイを簡素化しただけでなく、ソフトウェアのビルド、共有、信頼のあり方そのものを再定義したのです。
今では、Docker は 2,000 万人を超える開発者に利用され、毎月何十億回ものイメージ プルを支えています。
この「明確さ」「信頼性」「スケーラビリティ」を MCP にもたらすことができれば、インテリジェント エージェントとリアルな自動化の新しい時代を切り開くことができるでしょう。
それこそが、Docker が取り組んでいることです。
それを実現するのが、Docker MCP Catalog と Docker MCP Toolkit なのです。
この取り組みは単独で進められているわけではありません。Stripe、Elastic、Heroku、Pulumi、Grafana Labs、Kong Inc.、Neo4j、New Relic、Continue.dev など、業界をリードする企業とパートナーシップを結び、それぞれの専門知識が結集され、堅牢でオープンかつセキュアな MCP エコシステムの構築を進めています。これは単なる新しいプロダクトのリリースではなく、プラットフォームそのものが進化するための「土台」を作ることです。この構築は、すべての関係者によって共に進められています。
5月から、Docker MCP Catalog は、MCP ツールを見つけるための信頼できる場所として、Docker Hub とシームレスに統合されます。ローンチ時には、Stripe、Elastic、Neo4j など、業界をリードするパートナーによる 100 を超える認証済みツールが揃います。各ツールには、発行者の認証、バージョン管理されたリリース、そして開発者が必要なツールを素早く見つけられるように選別が行われます。
また、コンテナー イメージと同様に、MCP ツールは Docker の信頼性の高いプルベースのインフラを通じて配布されます。このインフラは、毎月何十億回ものダウンロードを支える実績があります。
その一方で、Docker MCP Toolkit はこれらのツールを実際に活用できるようにし、セキュアでシームレス、そして即座にローカルマシンや Docker が動作する任意の場所で利用できるようにします。Docker Desktop からワンクリックで立ち上げることで、MCP サーバーを数秒で起動し、Docker AI Agent、Claude、Cursor、VS Code、Windsurf、continue.dev、Goose などのクライアントと接続できます。複雑な設定は一切不要です。また、Docker Hub アカウントと統合された認証情報と OAuth 管理機能が組み込まれており、スムーズな認証が可能で、必要に応じて認証情報を簡単に取り消すことができます。Gateway MCP Server は、互換性のあるクライアントに対して有効化されたツールを動的に公開し、新しい docker mcp CLI により、それらのビルド、実行、管理が簡単に行えます。さらに、メモリ、ネットワーク、ディスクの隔離が組み込まれているため、すべてのツールはデフォルトでセキュアに実行され、初日から本番環境に適した状態で利用可能です。
では、Docker MCP Catalog と Toolkit がもたらす未来はどうなるのでしょうか?
こんな未来を想像してみてください。Docker Hub で数百の実行準備が整った MCP サーバーを直接ブラウズし、Redis や Postgres と同じように簡単に立ち上げることができる。数回のクリックで、それらをエージェントに即座に接続できる。もう、ハードコーディングされたシークレットや、npx や uvx を使ってツールをホスト全体のアクセス権で起動する必要はありません。さらに、分離性やセキュリティを犠牲にすることもなくなります。
そして、何より素晴らしいのは、Docker コンテナーを実行するだけで、MCP ツールがそのまま動作することです。馴染みのあるコマンドとツールを使うことで、学習曲線はほぼゼロ。可能性は無限大です。
Docker MCP Catalog と Toolkit の詳細はこちら。
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*本記事は、Docker 社が提供している以下の記事から抜粋・転載したものです。
MCPのDocker化 – エコシステムに発見、シンプルさ、信頼性をもたらす
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