より良い AI インタラクションを引き出すプロンプト エンジニアリング

ChatGPTClaude のような生成 AI ツールがより強力になり、広く使われるようになるにつれ、それらと効果的に対話する能力は不可欠なスキルとなっています。そこでプロンプト エンジニアリングの出番です。正確で構造化されたプロンプトを作成することを学ぶと、問題解決、コンテンツ作成、質問への回答など、AI が生成するアウトプットの質を大幅に向上させることができます。このガイドでは、プロンプト エンジニアリングの基礎を解説し、その重要性を説明するとともに、AI モデルとのコミュニケーション技術を習得するための実践的なテクニックを紹介します。

プロンプト エンジニアリングとは?

プロンプト エンジニアリングとは、GPT やその他の大規模言語モデル (LLM = large language model) などの AIモデルが生成する応答を導き、改善するためのテクニックのことです。プロンプト エンジニアリングの核心は、明確で効果的なプロンプトを作成することにあり、モデルに実行させたいタスクをよりよく理解させることです。このように、プロンプト エンジニアリングは、人間の意図と AI の能力をつなぐ架け橋として捉えることができ、LLM とより効果的にコミュニケーションを図り、高品質で適切かつ正確なアウトプットを達成するのに役立ちます。

AI の潜在能力を最大限に引き出すには、適切に設計されたプロンプトが不可欠です。的確な回答、創造的な提案、ステップバイステップの解決策など、どのようなものを求めている場合でも、適切に構造化されたプロンプトにより、モデルの回答の有用性を大幅に高めることができます。

プロンプトとは?

プロンプトとは、AI モデルに完了させたいタスクを指定するために提供する自然言語のテキスト入力です。プロンプトには、数語の単語から、例や追加情報を含む複雑な多段階の指示まで、さまざまなものがあります。

Claude や ChatGPT のようなツールを使っている場合、プロンプトはチャットボックスに入力します。開発者のコンテキストでは、プロンプトは、アプリケーション内でユーザーのクエリに応答するために AI モデルを誘導するための指示として機能します。

プロンプト エンジニアリングはなぜ重要?

プロンプト エンジニアリングは、基礎となるモデルの変更や追加トレーニングを必要とすることなく LLM の有効性を高めます。モデルがどのようにインプットに反応するかを改良することで、LLM は新しいタスクに適応できるようになり、より汎用的で効率的なものになります。

プロンプト エンジニアリングは、プロンプトの設計、テスト、改良を重ね、望ましいアウトプットが得られるまで繰り返すプロセスを指します。この方法は、LLM が従来直面していた課題を解決するのに役立ちます。たとえば、これらのモデルは本来、数学の問題を解くような論理的推論のために構築されているわけではありませんが、マルチステップで構造化されたプロンプトでは、より正確な結果を得るために、複雑なタスクを管理しやすいステップに分割するよう導くことができます。

AI における最大の課題のひとつである解釈可能性は、しばしば「ブラック ボックス」問題と呼ばれますが、適切に設計されたプロンプトでも取り組むことができます。たとえば、思考連鎖 (CoT = Chain-of-thought) プロンプトは、モデルが自分の推論を段階的に示すことを要求し、意思決定プロセスをより透明化します。このような透明性は、医療、金融、法律のような利害の大きい分野で特に重要となります。モデルがどのように結論に達したかを理解することにより、正確性を保証し、信頼を築き、情報に基づいた意思決定を支援します。

LLM が達成しうる限界を押し広げることで、プロンプト エンジニアリングは信頼性、透明性、使いやすさを向上させ、AI モデルを複雑化するタスクに取り組むことができる、より効果的で信頼できるツールに変換します。

プロンプト エンジニアの必須テクニック

熟練したプロンプト エンジニアは、LLM からよりニュアンスに富んだ有益な回答を引き出すために、さまざまな手法を用います。最もよく使われるテクニックには、思考連鎖 (CoT = Chain-of-Thought) プロンプト、少数ショットプロンプト、ロール プロンプトなどがあります。これらのテクニックは、LLM が特定のタスクやコンテキストに適したアウトプットを出せるように導くのに役立ちます。

思考連鎖 (CoT) プロンプト

CoT プロンプトは、LLM に問題をより小さな論理的ステップに分割するよう促すことで、複雑な推論タスクを解くための強力なテクニックです。たとえば、CoT プロンプトには次のようなものが考えられます。

「回答を出すときに、推論をステップごとに説明してください」

推論を明確にすることで、モデルはしばしば、その過程を示さずに単一の答えを出すよう求められた場合と比較すると、正しい答えに到達する可能性が高くなります。このアプローチは、数学、論理、または多段階の問題解決を含むタスクに特に有効です。

ゼロショット プロンプト

ゼロショット プロンプトでは、例や追加的な文脈を提供することなくモデルにタスクを完了するよう求めます。たとえば、ゼロショット プロンプトでは次のようにモデルに指示します。

「このメールを日本語に翻訳してください」

この場合、LLM は事前に訓練されたナレッジ ベースのみを頼りに応答を生成します。ゼロショット プロンプトは、詳細な指示や例が不要なため、モデルがすでに慣れ親しんでいる簡単なタスクに特に有効です。これは、一般的なタスクに LLM を活用する迅速で効率的な方法です。

少数ショット プロンプト

少数ショット プロンプトは、ゼロショット プロンプトをベースに、少数の例 (通常 2 – 5 例) を提示することで、モデルの反応を誘導します。このテクニックは、LLM が新しいタスクやフォーマットに効果的に適応するのを助けます。

たとえば、製品レビューの意見を分析するモデルを作りたい場合、次のようなラベル付きの例をいくつか含めます。

例 1
「この製品は完璧に機能します!」→ 肯定的
例 2
「2 日後に壊れました。」→ 否定的

上記のようなサンプルを提供することにより、LLM はタスクをよりよく理解し、新しいインプットに同じロジックを適用できます。

ロール プロンプト

役割に特化したロール プロンプトは、LLM が応答する際に特定の視点、トーン、または専門知識のレベルを採用するように指示します。たとえば、教育用チャットボットを構築している場合、モデルに次のように促すことができます。

「忍耐強い高校教師が初心者にこの概念を説明するように応答してください」

このアプローチは、適切な語彙、トーン、詳細レベルを組み込んで、モデルが特定のオーディエンスに向けて応答を調整するのに役立ちます。また、ロール プロンプトは、そのロールの人が持っているであろうドメイン特有の知識を含めることを可能にし、応答の質と関連性を高めます。

しかし、ロール プロンプトはバイアスをもたらす可能性があるため、慎重に活用する必要があります。たとえば、LLM に「男性として」と「女性として」の回答を求めると、男性のペルソナでは車の説明がより深くなるなど、内容の詳細に違いが生じる可能性があることが研究で明らかにされています。このようなバイアスを認識することが、ロール プロンプトを責任を持って適用するための鍵となります。

効果的なプロンプトを作るコツ

上記のテクニックの効果を最大限に引き出すには、プロンプトを正確かつ明瞭に作成することが重要です。ここでは、クオリティが高く、タスクに適したアウトプットを出せるよう LLM を導くプロンプトをデザインするのに役立つ、実績のある 5 つの戦略を紹介します。

  1. 明確かつ具体的に
    アウトプットの形式、トーン、オーディエンス、コンテキストなどの詳細を含め、何を求めているかを明確に定義します。指示を番号付きリストに分割することで、モデルが指示に従いやすくなります。
  2. バリエーションを試す
    プロンプトを複数のバージョンで実験し、微妙な変更がアウトプットにどのような影響を与えるかを確認します。結果を比較することで、最も効果的な表現を特定することができます。
  3. 区切り文字を使用する
    XML タグ (<example> や <instructions> など) や三重引用符 (「”””」) などの視覚的な区切り文字を使用してプロンプトを構造化します。これにより、インプットの各セクションをモデルが理解し、区別しやすくなります。
  4. ロールを割り当てる
    「サイバーセキュリティの専門家 」や「フレンドリーなカスタマー サポート エージェント 」などの具体的なロールを請け負うようモデルに指示します。このアプローチは、役に立つコンテキストを提供し、回答のトーンや専門性を調整できます。
  5. 例を挙げる
    何を期待しているかを明確にするために、インプットとアウトプットのサンプルを含めます。例は、特定の形式、スタイル、または推論プロセスを必要とするタスクに特に効果的です。

プロンプト エンジニアリングに共通する課題

効果的なプロンプトを作成する際には、LLM の限界を考慮することが重要です。プロンプトを作成する際に注意すべき問題には、トークンの制限、例文のバランスの欠如によるバイアス、モデルへの情報の提供過多などがあります。

トークンの制限

ほとんどの LLM は、インプットのサイズに制限があります。これには、プロンプトとスプレッドシート、Word ドキュメント、Web サイトの URL など、コンテキストのためにモデルに与える追加情報の両方が含まれます。このインプットは、トークン化によって作成されたテキストの単位で測定されます。トークンは 1 文字程度の短いものから、1 単語程度の長いものもあります。長いインプットは、モデルがより多くの情報を分析する必要があるため、計算コストが高くなります。数百から数千のトークンに制限を設けることで、計算リソースと処理能力を管理することが可能になります。

例の偏り

少数ショットから学習するタスクでは、モデルに学習させる例の種類によって、モデルの応答が例と一致しすぎることがあります。たとえば、感情分類タスクを実行するようモデルに要求しているにもかかわらず、5 つの肯定的な例と 1 つの否定的な例から学習するようモデルに与えた場合、モデルは新しい例を肯定的とラベル付けする可能性が高くなってしまうかもしれません。

情報過多

1 つのプロンプトで多くの情報を提供しすぎると、モデルを混乱させ、最も関連性の高い情報を特定できなくなります。複雑すぎるプロンプトは、モデルが提供された例に焦点を絞りすぎて (オーバーフィッティング)、効果的に一般化する能力を失う可能性があります。

プロンプト エンジニアリングの応用

プロンプト エンジニアリングは、さまざまな業界で AI モデルの応答性、適応性、有用性の向上に役立っています。ここでは、プロンプト エンジニアリングが主要分野の AI ツールをどのように強化しているかを紹介します。

コンテンツ生成

企画書、ホワイト ペーパー、市場調査、ニュースレター、スライド、メールなど、非常に具体的でコンテキストを意識したビジネス コミュニケーションの生成を可能にすることで、巧みに作成されたプロンプトはコンテンツ生成に革命をもたらしています。

カスタマー サービス

より良いプロンプトは、カスタマー サービスのチャットボットがより適切で共感性の高い、効果的な応答を提供するのに役立ちます。プロンプト エンジニアリングは、応答のクオリティとトーンを向上させることで、チャットボットが問題を迅速に解決し、必要に応じて人間の専門家への複雑な懸念のエスカレーションを可能にします。

教育

AI ツールは、教育のコンテキストで複雑な回答を評価するのに苦労することがあります。しかし、CoT プロンプトは AI モデルが生徒の回答を推論し、正しいかどうかを判断するのに役立ちます。生徒が誤った回答をした場合、このプロンプトによって AI は誤った推論を特定し、適切なフィードバックを提供することができます。

プロンプト エンジニアリングのためのツールとリソース

独自のプロンプトを作成するための使いやすいリソースは数多くあります。ここでは、チュートリアルやプロンプト ライブラリ、テスト プラットフォームを紹介します。

学習リソースとチュートリアル

  • DAIR.AI
    プロンプト エンジニアリングの無料チュートリアルを提供しています。
  • Anthropic
    プロンプト エンジニアリングを学び、独自のプロンプトを作成する練習をするための練習問題を含む、無料のインタラクティブ チュートリアルを提供しています。  
  • Reddit
    r/promptengineering コミュニティに参加して、他の人が書いているプロンプトを探したり、オープンソースのプロンプト ライブラリを探索したりしましょう。
  • OpenAI
    より良いプロンプトを書くための 6 つの戦略を共有しています。
  • ChatGPT プロンプト ジェネレーター
    何から始めたらいいかわからないときに、HuggingFace ツールを使ってプロンプトを生成します。

プロンプト ライブラリと例

他の人がすでに書いたプロンプトを、とっかかりとして使うこともできます。ここでは、Anthropic、OpenAI、Google、GitHub ユーザーが提供している無料のプロンプト ライブラリを紹介します。

  • Anthropic のプロンプト ライブラリ
    個人とビジネス両方のユースケースに最適化されたプロンプトの検索可能なライブラリです。
  • ChatGPT Queue Prompts
    このリポジトリには、コピー ペースト可能なプロンプト チェーンがあり、ChatGPT にタスクを完了させる前にコンテキストを構築するのに使えます。企業調査、契約書作成、ホワイト ペーパー作成などのプロンプトが含まれています。
  • Awesome ChatGPT Prompts
    この人気の高い ChatGPT プロンプト ライブラリには何百ものプロンプトがあり、その多くは ChatGPT に 「マーケター」 や 「JavaScript コンソール」 のような特定のロールを引き受けるように指示することから始まります。
  • Awesome Claude Prompts
    Awesome ChatGPT Prompts をモデルにしたユーザー生成のコレクションで、規模は小さいものの、ビジネス コミュニケーションを含む多くの有用なプロンプトのテンプレートがあります。
  • Google AI Studio
    Gemini で使用できるプロンプトのギャラリーです。その多くは、画像から情報を抽出することに焦点を当てています。
  • OpenAI のプロンプト例
    翻訳、Web サイト作成、コード修正などのタスクのプロンプト例を検索できるコレクションです。

試験用プラットフォーム

試してみたいプロンプトが見つかったら、試験的に使ってみましょう。以下のツールを使うと、さまざまなプロンプトを並べて比較することができ、その効果を評価できます。

  • OpenAI Playground
    異なる GPT モデルのコンフィギュレーションを使ってプロンプトをテストし、アウトプットを比較することができます。
  • Anthropic Workbench
    異なるプロンプトのアウトプットを並べて比較し、スコアリング機能を使ってパフォーマンスを定量化できます。
  • Prompt Mixer
    macOS 用のオープンソースのデスクトップ アプリで、異なる AI モデル間でプロンプトのライブラリを作成、テスト、構築できます。

プロンプト エンジニアリングの未来

今後数年間で、プロンプト エンジニアリングは、LLM と人間が協力して実行するタスクになると予想されます。プロンプト エンジニアリングの研究者たちは、生成モデルに独自のプロンプトを書くことを教えています。たとえば、Google DeepMind の研究者たちは、OPRO (Optimization by PROmpting) と呼ばれる「メタプロンプティング」アプローチを開発し、LLM をプロンプトのライブラリで訓練した後、問題に応じて独自のプロンプトを生成するよう導いています。

研究者たちはまた、自己プロンプトを生成する LLM が生成したプロンプトの有効性を比較、評価する方法を開発しており、これにより LLM が複雑なタスクに対してより自律的に対応できるようになる可能性があります。


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